戦略を表現する図

今回は小さな不動産屋さんが効率的に集客を行うための戦略について、お話してみたいと思います。

不動産屋として独立するとなると、独立するための手続きや実務面ばかりに目がいく方が多いですが、そんなことより集客戦略について考えることの方がはるかに重要です。
手続きがスムーズに進んで、無事、独立できたところでお客さんを獲得することができなければビジネスを続けていくことはできませんし、実務知識を活用するチャンスもないわけですから。

一日も早くビジネスを軌道に乗せるためにも独立する前に明確な集客戦略を検討するようにして下さい。

集客戦略とは何か?

集客戦略というのは、どうも曖昧な意味で使われることが多いようです。
おそらく、戦略と戦術の違いがわかっていない方が多いためでしょう。

そこで、この記事では理解の混乱を避ける意味でも集客戦略の定義を最初にはっきりさせておきたいと思います。

集客戦略とは
誰に
何を
販売するのか

集客するために
どんな方法
用いるのか

を意味する言葉とします。

もちろん、これ以外の定義も考えられると思いますが、少なくてもこの記事内では上記の意味で使われていると考え読み進めて下さい。

ちなみに集客方法を「いかにうまく実行するか」というのは戦術レベルの話です。
戦術レベルの話は、今後、別の記事で、方法ごとに書かせてもらうつもりですので、戦術について、学びたい方は、そちらの記事を参考にして下さい。

集客戦略がなぜ重要なのか?

ひょっとしたら、あなたはこんなことを考えているかもしれません。

「戦略なんて大企業のためのものでしょ?
個人レベルでやっている小さな不動産屋に戦略なんて必要ないと思うんだけど。」

残念ながら、その考え方は全くの逆です。
小さな不動産屋だからこそ、大手の不動産屋以上に明確な集客戦略が必要となるのです。

考えてもみて下さい。
小さな不動産屋が何の戦略もなしに大手の不動産屋と競い合って、生き残れる可能性はありますか?
まず、ないですよね。

「どうすれば、大手と単純比較されることを避けられるか?」
「どうすれば、大手の影響を最小化できるか?」

こういった戦略的な思考ができなければ、せっかく独立しても、あっという間に事業を続けられない状況に陥ってしまうのがオチです。

「戦争論」の著者で孫子と並び称される偉大な戦略家、クラウゼヴィッツは、こう言っています。

戦略での失敗を戦術で取り返すことはできない。

戦略というものの価値、本質についてこれほど的確に言い当てた言葉は他にないと思います。

この言葉の示すとおり、集客戦略策定の段階で失敗してしまうと、その後、どれほど頑張っても思うほど集客できるようにはなりません。
まずは効率的な集客を実現しうる下地を作るべく集客戦略の策定に心血を注いで下さい。

集客戦略策定の5ステップ

それでは、いよいよ集客戦略策定の具体的な手順について見ていきます。

読んでいる途中で「こんなことをやっても意味があるのか」と感じることがあるかもしれませんが、頑張って読み通して下さい。
最後まで読んで頂ければ、戦略というものの価値をしっかりとご理解頂けるはずです。

ステップ1:市場調査を行う

不動産屋として独立しようとしている地域(既に独立している場合は営業している地域)の市場調査を行います。

まず、最初に独立しようとしている地域の人口統計をチェックします。
「〇〇市 人口統計」などとインターネットで検索すると市等が公開している人口統計情報を見つけることができますので、総人口の他、男女別、年齢別、町名別の人口やその推移などを確認してみて下さい。
そこから、現在の不動産取引需要の規模や、今後の推移をざっくりと予測することができます。

長年、その地域に住んでいる場合、こういったことは、なんとなく肌感覚でわかるものだと思いますが、その肌感覚が現実とは大幅にずれてしまっていることもありますので、一応は現実の数字を確認してみることをおすすめします。

さらに賃貸需要や売買需要それぞれの規模についても確認しておきましょう。

レインズを見ることができる環境にあれば、登録物件数や成約事例数などから容易に賃貸需要や売買需要を知ることができますが、それができない方の場合、SUUMO等のポータルサイトでの物件登録数から需要規模を推測することになります。
データとしての正確性にはかけますが、大まかにでも把握できれば十分ですので周辺、市町村の登録数などと比較しながら確認するようにして下さい。

※参考
賃貸需要については「見える賃貸経営」というサイトの以下のページで知ることができます。
見える賃貸経営/全国の賃貸用住宅の空室率一覧

都道府県をクリックすると、市町村ごとの空室率を確認することができます。
念のため、申し上げておきますと空室率が低ければ低いほど、賃貸需要が高い地域と推測できることになります。

売買需要については、国土交通省の土地取引規制基礎調査概況調査結果が参考になります。
土地取引規制基礎調査概況調査結果

土地の取引件数しか、わかりませんが市町村ごとの取引件数を知ることができるという意味で有益なデータであると考えます。

ステップ2:競合調査を行う

次に競合調査を行います。

具体的には
①独立しようとしている地域内に何件ぐらいの不動産屋があるのか
②その競合としての強さはどうか
③どんなポジショニングをとっているのか
といったことを調べます。

①については宅建協会と全日本不動産協会の加盟業者数を調べれば良いでしょう。
それ以外にも宅建業者の団体としてはFRKや全住協などが存在しますが、加盟社数は少なく、わざわざ調べなくてもざっくりとした競合数を知る上では、さほど、影響はありません。

②については
・インターネットで「〇〇市 不動産(あるいは新築戸建て・中古戸建・中古マンション・土地・賃貸)」などと検索して検索結果5ページ目ぐらいまでのサイトをチェックする。
(PPC広告の出稿サイトもチェックして下さい。)
・SUUMOやHOMES’のような不動産ポータルサイトに物件情報を登録している不動産屋を調べる。
といったことをやって頂ければ、競合の強さを大体、把握できるはずです。

③については②のインターネットで「〇〇市 不動産(あるいは新築戸建て・中古戸建・中古マンション・土地)」などと検索してサイトをチェックする際に
・そのサイトを運営している不動産屋が「誰に(ターゲット)」「何を(賃貸仲介・売買仲介などの不動産屋としてのサービスの別)」を提供しているのか、また
・自社の強みとしてどんなことをアピールしているのか
を調べて下さい。

まっちゃん先生まっちゃん先生

市場調査と競合調査を行うと市場に確かに存在しているものの十分に満たされていない需要を発見することができます。
その需要に基づいて「誰に」と「何を」を考えれば、当たり前のように儲かる戦略を見つけることができますよ。
あと、競合のポジショニングを調べるのは、ある程度の需要があるのに空いている、もしくは供給が十分でないポジショニングを探すためです。
ポジショニングを単純に真似るためではありませんので誤解しないようにして下さい。

ステップ3:「誰に」を考える

ステップ1、ステップ2の調査結果を基に「誰に」を考えます。
つまり、ターゲットを決めるということです。

現在、存在している不動産屋さんのほとんどが明確なターゲット設定を行っていません。
あるいはターゲット設定をしていても、そのことをターゲットに明確に伝えられていません。

せいぜい、賃貸専門の不動産屋さんが「賃貸の○○○」などといった屋号を用いることによって、ターゲットが「お部屋探しをしているお客さん」であることを明示している程度でしょうか。

こういう状況だからこそより絞り込んだ形で「ターゲット」を設定し、そのことをはっきりと伝えるだけで自然と集客できるようになるのです。
ターゲットにあてはまるお客さんは「私のための不動産屋さんだ」と感じ無視できなくなるからです。

ステップ1、ステップ2のような調査を行うと規模、質ともにビジネスとしてのうまみのある、有望なターゲットになりうるお客さんのセグメント(一定の基準でお客さん全体を分類した際の一分類)が高い確率で見つかります。
そのセグメントを自社のターゲットにすれば良いのです。

もちろん、ターゲットにあてはまるお客さんに選ばれやすくなる反面、ターゲットにあてはまらないお客さんからは選ばれにくくなります。
しかし、ターゲットにあてはまるお客さんから得られる売上がビジネスを維持発展させるのに十分なものになるのであれば気にする必要はありません。
ターゲットを絞らずに、すべてのセグメントのお客さんを取り込もうとしている限り、大手等のより強い競合と単純比較され、ほとんどお客さんに選んでもらえない状況になってしまうのですから。

勇気をもってターゲットを絞り込みましょう
そして、そのことをわかりやすい言葉でターゲットに明確に伝えましょう
それができれば自然に集客できるような状況を作ることができるはずです。

ステップ4:「何を」を考える

「何を」というのは不動産屋として提供するサービスのことです。
賃貸仲介や売買仲介といった取引態様のレベルで絞り込むだけでなく、物件種別まで絞り込んでさらに専門的なサービスとすることもあります。

「何を」については、ステップ3の「誰に」と密接な関係がありますので、同時に検討しても構いません。

また、「誰に」が決まると「何を」もほぼ自動的に決まるケースも多いです。
たとえば「誰に」が「ビジネスを始めるために事務所や店舗を探している人」なら「何を」は「事務所や店舗の賃貸仲介もしくは賃貸・売買仲介」にほぼ決まってしまいます。

さらに「何を」を決めてから「誰に」を考えることも少なくありません。
ビジネスはお客さんがいない限り成立しませんので、マーケティング上は「誰に」を最初に考えるのがセオリーとされていますが、現実的には「何を」がある程度、決まっていないと「誰に」を考えようがないですから。

そういう意味ではステップ3、ステップ4については、あまり順番にこだわらず、柔軟に考えてもらって結構です

ステップ5:「どんな方法で」を考える

最後に「どんな方法で」の部分を考えます。

集客方法については流行りのようなことに振り回されず、ターゲット本位で考えることが重要です。
たとえばターゲットが「不動産の売却を検討している60代男性」の場合、いくらTikTokが流行っているからといってTikTokに広告を出稿しても、反応なんてあるはずがありません。

ここまで、わかりやすい失敗をする人は稀だとは思いますが、これに近い失敗をしている人は結構、います。
ターゲットとの整合性をしっかりと考えた上で、どんな集客方法を用いるかを考えて下さい。

なお、集客方法は必ずしも一発で効果的な方法が見つかるわけではありません。
ですので、効果がありそうな集客方法のアイデアをなるべく多く出し、それらに優先順位をつけて順番に試すようにして下さい。

市場調査、競合調査を行った上でしっかりと「誰に」「何を」を考えていれば、必ず効果的な集客方法を見つけることができるはずです。

まっちゃん先生まっちゃん先生

「誰に」「何を」の検討がいい加減だったり、その検討の基礎となった市場調査、競合調査の結果が実態からかけはなれたものである場合には、ターゲットにマッチした集客方法を選び、その方法をどれほど熱心に工夫しながら実践しても、全く集客できないということが起こりえます。
「戦略での失敗を戦術で取り返すことはできない。」という言葉を今一度、肝に銘じて下さい。

戦略を学ぶために読むべき本

最後により深く戦略について理解したいという方のためにおすすめの本を2冊紹介したいと思います。

1.フォーカス!~利益を出し続ける会社にする究極の方法~

アル・ライズ著 出版社:海と月社

戦略を策定する上で最も重要な考え方、フォーカスすること(提供する商品やサービスを絞り込むこと)の重要性を教えてくれる名著です。
ビジネスを成功させるためには絶対的にフォーカスする必要があること、また、フォーカスを失えば巨大企業でさえも競争力を失い、ビジネスを傾かせることになることが豊富な事例をもとに解説されています。
戦略本の類としてはかなり読みやすい本だと思いますので、本を読むことが苦手という方にも是非とも読んで頂きた本です。

ちなみに表紙の推薦コメントはマーケティングの大家、フィリップ・コトラーです。

2.マイケル・ポーターの競争戦略

ジョアン・マグレッタ著 出版社:早川書房

競争の中で企業が優れた業績を残すための方法、すなわち競争戦略について書かれた本です。
内容的には少々、難しく感じるかもしれませんが、丁寧に読み進めて頂ければビジネスの場面における戦略というものの本質を腑に落ちて理解することができるはずです。

競争戦略というのは「いかにして競合等に打ち勝つか」を示したものではありません。
「いかにして競合等の直接的な影響を避けて利益を出し続けるか」を示したものです。
本書を通じて、そのことに納得ができたとき、あなたの戦略力は、全経営者の上位5%に入ることになると思います。
本気でおすすめします。

まっちゃん先生まっちゃん先生

ポーター自身が書いた「競争戦略論」ではなく、こちらの本をおすすめしたのは読みやすさを重視したためです。
ジョアン・マグレッタはポーターの教えを、わかりやすく、かつ、正しく伝えることができる非常に優れた書き手だと思いますので是非、読んでみて下さいね。

いずれの本も、ビジネスをやっていく上で一生の財産となる見識をあなたに与えてくれる本です。
日常の忙しさを言い訳にせず、是非、一日も早く入手してお読みになって下さいね。

まとめ

1.集客戦略とは①誰に何を販売するのか、集客するために③どんな方法を用いるのかを意味する言葉である。

2.小さな不動産屋だからこそ、大手の不動産屋以上に明確な集客戦略が必要となる。
戦略での失敗を戦術で取り返すことはできない。」という言葉を肝に銘ずべし。

3.集客戦略策定の5ステップ次のとおり。
ステップ1:市場調査を行う
ステップ2:競合調査を行う
ステップ3:「誰に」を考える
ステップ4:「何を」を考える
ステップ5:「どんな方法で」を考える

4.おすすめの戦略本は「フォーカス!」と「マイケル・ポーターの競争戦略」の2冊。