こんにちは松村です。
本日は不動産屋の廃業率についてお伝え致します。
不動産屋の廃業率なんて個人的には、それほど気にする必要のない数字だと考えています。
ビジネスモデルの検討、的確にターゲットに訴求しうる集客活動など、やるべきことをしっかりやれば望まぬ形で廃業することなんて、まずないと思っていますので。
しかし、これから不動産屋として独立しようとしている方の中には、やはり、気になるという方が少なからず、いらっしゃるようなので、お伝えしておこうということです。
そういう方の不安を払しょくできるだけの情報となるかはわかりませんが、統計データなどから読み取れる限りのことはお伝えしていくつもりですので気になる方は是非とも最後までご覧になって下さい。
それでは早速、行ってみましょう。
不動産屋の廃業率
不動産屋の廃業率については色んな捉え方があると思いますが、この記事の中では簡易に以下のような式で計算することと致します。
その年度における不動産屋の廃業件数÷年度末における不動産屋の件数
なお、廃業件数については廃業理由のうち、合計廃業件数から免許替え(転出)による廃業の件数を差し引いています。
免許替え(転出)による廃業の場合、他の免許権者から免許を受けて営業を継続しており、実質的な廃業には当たらないと考えるからです。
上記の式および前提に立ち計算される不動産屋の廃業率の推移は以下の表のとおりです。
不動産屋の件数 | 不動産屋の廃業件数 | 不動産屋の廃業率 | |
平成7年度 | 141,680 | 7,702 | 5.16% |
平成8年度 | 141,388 | 7,445 | 5.00% |
平成9年度 | 140,551 | 7,110 | 4.82% |
平成10年度 | 138,752 | 7,503 | 5.13% |
平成11年度 | 139,139 | 5,907 | 4.07% |
平成12年度 | 138,524 | 6,512 | 4.49% |
平成13年度 | 134,866 | 9,102 | 6.32% |
平成14年度 | 132,066 | 8,479 | 6.03% |
平成15年度 | 130,037 | 7,916 | 5.74% |
平成16年度 | 130,541 | 5,349 | 3.94% |
平成17年度 | 130,916 | 5,756 | 4.21% |
平成18年度 | 130,276 | 7,476 | 5.43% |
平成19年度 | 129,699 | 6,990 | 5.11% |
平成20年度 | 127,517 | 7,646 | 5.66% |
平成21年度 | 126,421 | 5,903 | 4.46% |
平成22年度 | 125,771 | 5,666 | 4.31% |
平成23年度 | 123,872 | 6,834 | 5.23% |
平成24年度 | 122,615 | 6,124 | 4.76% |
平成25年度 | 122,046 | 5,570 | 4.36% |
平成26年度 | 122,631 | 4,502 | 3.54% |
平成27年度 | 123,249 | 4,619 | 3.61% |
平成28年度 | 123,333 | 5,527 | 4.29% |
平成29年度 | 123,712 | 5,222 | 4.05% |
平成30年度 | 124,377 | 5,022 | 3.88% |
令和元年度 | 125,585 | 4,443 | 3.41% |
令和2年度 | 127,149 | 4,397 | 3.34% |
令和3年度 | 128,479 | 5,261 | 4.09% |
令和4年度 | 129,502 | 5,283 | 4.08% |
令和5年度 | 130,583 | 5,157 | 3.95% |
※一般財団法人不動適正取引推進機構の宅建業者の統計概要データを元に計算しています。
https://www.retio.or.jp/toukei/pdf/stat_g.pdf
過去27年間において不動産屋の廃業率が最も高かったのが平成13年度の6.32%、逆に最も低かったのが令和2年度の3.34%です。
平成13年度の廃業率は令和2年度の廃業率の1.89倍ということになりますから、結構、大きな波があると言えそうです。
不動産屋の業界の景気の良し悪しをある程度は反映しているのでしょう。
近年の廃業率に注目しますと平成30年度以降はずっと3%台で推移していることがわかります。
令和2年度、令和3年度に関しては、世間一般では、コロナ感染が影響しての倒産がかなり増えたわけですが、それにもかかわらず不動産屋の廃業率は低水準にとどまっています。
廃業率という点だけで見れば不動産屋の業界に対するコロナの影響はそれほど大きくなかったと言えそうです。
廃業を免れるためのポイント
上記の表から計算される過去29年間の不動産屋の年平均廃業率は4.6%ほどということになりますから、決して廃業率が高いということはないでしょう。
また、不動産屋として、それなりにうまくいっていても、ある程度の年齢になったら、廃業するということも当然、あるでしょうから、自然な範囲で新陳代謝しているだけと捉えることもできそうです。
少なくとも廃業率から判断する限りは不動産屋としてやっていくのが特に大変ということはないように思います。
とはいってもビジネスはみずもの、実際にやってみなければわからないという側面があるのもまた事実です。
そこで、ここではより確実に望まぬ廃業を免れ、1年でも長くビジネスを続けていくために押さえておくべきポイントを、簡単にお伝えしておきたいと思います。
少なからず役に立つ情報だと思いますので是非とも参考になさって下さい。
①市場調査をしっかりやる
不動産屋として開業しようとしている地域における不動産屋の提供するサービスに対する需要がどの程度あるのかをしっかりと調査して下さい。
特に田舎においては仲介手数料算定の基礎となる不動産の価格等が非常に安く、それなりのサービス需要がないとビジネスが成立しえません。
決して競合が少ないから、うまくいくだろうと安易に考えないようにして下さい。
そもそも需要がなさすぎてビジネスとして成立しないだろうと判断されたがために競合が参入していない可能性もあるのですから。
多少、控え目に収益シミュレーションを行っても食べていくことぐらいはできそうかを、ちゃんと確認した上で開業の是非を判断されることをおすすめします。
なお、簡単にできる市場調査の方法としては以下のようなものがあります。
・SUUMO等の物件検索サイトにおける開業予定エリアの物件登録数をチェックする
不動産屋としても採算が合うからこそ物件検索サイトに物件登録をしているわけです。
開業予定エリアにおける不動産屋に対する需要の大きさを推し量る上での重要な指標となりえます。
・不動産屋の来客数をチェックする
既存の不動産屋さんの来客数がわかれば、これも需要を推測する上での手掛かりになります。
もちろん正確な数値を把握することはできませんが、不動産屋さんの前を通るたびにお客さんが入っているかどうかをチェックしていれば、大雑把にでも需要の大きさは把握できるはずです。
・人口統計データをチェックする
行政が公開している人口統計データで人口推移を確認します。
全国的には顕著な人口減少傾向にあると言っても局地的には人口が増加しているような地域というのも存在しています。
その原因を特定し、その原因が今後も人口増加にいい影響を与え続けるものと判断できれば、その地域での不動産に対する需要は増加するものと推測できます。
②地域の商習慣を知る
地域の他の不動産屋さんがレインズ登録などの法律上の義務を果たしているのかもチェックする必要があります。
地域の不動産屋さんがほとんどレインズ登録をしていないような状況だと開業してもお客さんにまともに物件を紹介することができないからです。
宅建業法では専任媒介契約の場合で媒介契約締結の日から7日以内に、専属専任媒介契約の場合で媒介契約締結の日から5日以内に、それぞれ指定流通機構(レインズ)に物件情報を登録することが義務付けられていますが、残念ながら、こんな最低限のルールさえ、しっかりとは守られていないのが宅建業界の実情です。
特に地方ではその傾向が顕著で全物件の2割程度しかレインズ登録されていないというような地域も存在しています。
何も知らずにこんな地域で開業してしまったら大変なことになってしまいますよね。
たとえお客さんがいても紹介できる物件がないわけですから。
開業してから慌てることがないよう、この点、必ず事前に確認するようにして下さい。
また賃貸物件の仲介をメインの業務とする予定の場合、いわゆる広告料の有無やその多寡も事前に確認しておかれる方がいいでしょう。
広告料の有無やその多寡は直接的にビジネスの収益性に影響を与えることになるからです。
間違っても広告料が全く出ないような地域で開業することがないよう注意して下さい。
広告料って何ですか?
貸主さんから客付け側の不動産屋に支払われる金銭のことです。法律上は認められていない、ちょっとグレーな金銭なのですが、商習慣的に当たり前に支払われていて、不動産屋にとっては、仲介手数料よりはるかに大きな収入源となっています。
③差別化を図る
既存の不動産屋さんとの違いを明確にするべく差別化を図って下さい。
新規参入する不動産屋と比べれば、既存の不動産屋さんは原則的にすべてが強者です。
その強者と単純比較されることを避けるべく差別化を図る必要があるということです。
違いがわからなければお客さんはより大きな不動産屋、より実績のある不動産屋を選ぶことになります。
そうなることを避けるべく、必ず差別化を図り、差別化によって生じた違いを見込み客にわかりやすい言葉で伝えるようにして下さい。
なお、差別化を図る方法の代表的なものとしては以下のようなものがあります。
- ターゲットを絞り込む
- 地域を絞り込む
- 物件種別を絞り込む
- 提供サービスを絞り込む
キーワードは「絞り込む」です。
絞り込むと自社のビジネスの対象となりうる、お客さんの総母数は当然、減少します。
しかし、それを補ってあまりあるくらい、ターゲット層のお客さんからの反応率は高くなります。
恐れず絞り込みましょう。
それこそが後発組の不動産屋がお客さんから選ばれるためのたった一つの方法です。
④集客に注力する
③をしっかりやった上で集客活動に思いきり注力しましょう。
不動産屋を開業して上手くいっていない人は例外なく集客活動への注力の仕方が足りていません。
「お客さんがいない、お客さんがいない」とぼやきながらその問題を解決するための具体的な行動を起こせていないのです。
十分な売上が立っていない間は時間と労力の8割と使えるお金の5割を集客に注ぎ込みましょう。
十分な売上が立つようになってから後も時間と労力と使えるお金の5割を集客に注ぎ込むことをおすすめします。
ビジネスの成否は95%まで集客への力の入れ具合で決まるものであると考えて下さい。
なお、十分な売上も立っていないのに集客に注ぐ時間と労力を確保することが難しいという方は、高い確率でビジネスの成否に関係のない「やらなくてもいいこと」をやっています。
ご自身の時間と労力の使い方を定期的に見直すことを習慣化して下さい。
そうすれば望まない形での廃業を高確率で避けることができるはずです。
なるほど、やはり集客活動が圧倒的に重要なんですね。肝に銘じます。
⑤紹介をお願いする
通常の集客活動にしっかりと力を入れる一方でお客さんの紹介をお願いして回るということも非常に重要です。
紹介のお客さんは通常の集客活動で獲得したお客さんに比べて成約率が高く、売上の安定化に寄与してくれるからです。
さらに成約に要する期間も短い傾向にあるなど、紹介のお客さんは、ビジネスをやっている側からすれば、いいことづくめの本当ににありがたいお客さんですので、一人でも多く獲得できるよう、積極的に紹介をお願いして回って下さい。
なお、お客さんの紹介を集客の一つの柱にまで育てる気があるのなら、紹介料の支払いルールを定めるなど、お客さんの紹介を制度として整備する方がいいです。
紹介制度を整備し、それがうまく機能しはじめると、紹介のお客さんがネズミ算的に増えていくことも十分ありえますので。
最後に紹介による集客を成功させるための心得をお伝えしておきます。
お客さんの紹介は勝手に発生するものではありません。
意図的に発生させるものです。
肝に銘じて下さいね。
うちのコンサルのクライアントの中には紹介だけで年商3000万円を突破しているような不動産屋さんがいます。奥さんとの2人営業でですよ。それぐらい売上アップ効果の高い方法なので決して軽んじないで下さいね。
⑥経済的な備えをする
通常の集客活動および紹介依頼にしっかりと励んでも運悪く、すぐには売上が立たないということも当然ありえます。
その場合にも問題なくビジネスを続けていけるよう経済的な備えをしておくべきです。
具体的には6ヶ月分、できれば1年分の運転資金および生活費の準備をしておかれることをおすすめします。
ちなみに私自身はこの経済的な備えが不十分だったため、深夜バイトをする羽目になりました。(笑)
まだ30代前半と若かったため、体力的にも何とかなりましたが、今だったら100%無理だと思います。
私と同じ轍を踏むことがないよう注意して下さいね。
なお、経済的な備えをしたくても現状の収入では何年かかるかわからないという方もいらっしゃることでしょう。
そういう方は日本政策金融公庫等から融資を受けることを検討されても良いと思います。
「融資って要するに借金でしょ。借金するのはちょっとなあ」という方がいらっしゃるかもしれませんが、ビジネスのために受ける融資は個人的な消費のための借金とはあくまで別物です。
まともな事業計画さえあれば、将来的に手にするであろう収入の中からちゃんと返せる見込みがあるお金ですので。
お金がたまらず、開業時期がどんどん後ろにずれるようでは機会損失が大きくなるばかりですので、融資の利用を是非、前向きに検討して頂きたいと思います。
うーん、それでもやはり借金するのは怖いなあ。亡くなった親父からも住宅ローン以外の借金は絶対にするなって言われてるし。
まあ気持ちはわかりますが、お金がたまるまで3年待てば、3年分の機会損失を受けることになるし、5年待てば、5年分の機会損失を受けることになるわけです。年商1億円まで行けたはずなので年商5000万円までで終わるというこだったありえるでしょう。そういったことも考えて、あまり妄信的に融資を受けることを敬遠しないようにして下さい。
まとめ
- 過去29年間で不動産屋の廃業率が最も高かったのは平成13年度の6.32%、逆に最も低かったのが令和2年度の3.34%である。
- 過去29年間における不動産屋の廃業率の年平均は4.6%である。
- より確実に望まぬ廃業を免れ、1年でも長く不動産屋のビジネスを続けていくためのポイントは次のとおり。
①市場調査をしっかりやる
②地域の商習慣を知る
③差別化を図る
④集客に注力する
⑤紹介をお願いする
⑥経済的な備えをする
私自身は上でも触れたとおり、まずは、⑥の経済的な備えができていなかったため、深夜バイトをする羽目になったわけですが、それ以外にも①③④⑤のポイントについても全く押さえられていなかったと思います。
はい、何の事前準備もない無策無謀な開業だったわけですw
まあ、それでも、廃業することなく、どうにかビジネスを続けることができたわけですから、やはり不動産屋は潰れにくいビジネスなのかもしれません。
あまり無責任なことは言えませんが、そんなに失敗した時のリスクを考える必要はないのかも。
そもそも飲食店などをやるのと違って、大きな初期投資が必要となるわけでもありませんしね。
だから、やってみたいという気持ちが本物なら、あまり心配し過ぎず、是非、その気持ちに素直にしたがって頂きたいと思います。
以上、今回は不動産屋の廃業率および望まぬ廃業を避けるために押さえるべきポイントなどについてお伝え致しました。