こんにちは、松村です。

ここのところ不動産エージェントについてのご質問をお受けすることが増えています。

自分で不動産屋として独立開業するより手軽そうなイメージがあるため、興味を持つ方が増えているのかもしれません。

ただ、私も不動産エージェントについての表面的な情報は把握しているものの、そこから一歩踏み込んだ、現実的な事情を知っているわけではありません。

そこで!

私の講座の元受講生で不動産エージェントとして働いた経験のあるNさんに不動産エージェントの現実についてインタビューを行ってみました

経験者だからこそ語ることができる、なかなか面白い話をお聞きすることができましたので興味のある方は是非ともお読みになって下さい。

赤裸々に語られた不動産エージェントの現実

松村:
それでは早速、質問させて頂きますね。
まずはNさんが不動産エージェントとして働こうと思ったきっかけを教えて下さい。

Nさん:
もともと、不動産屋をやりたいというのがあって、ただ、不動産屋の業界のことを何も知らなかったので、経験を積む意味で不動産エージェントの仕事をやってみることにしました。

松村:
経験を積むということなら、不動産屋で勤務するという選択肢もあったと思うのですがなぜ不動産エージェントを選ばれたのでしょうか。

Nさん:
不動産屋で普通に働くと拘束時間が長かったり、上から売上のことで詰められたりするという話を人から聞いてまして、そういうのは嫌だなあと思って。
不動産エージェントなら、そういうことはないということだったので、そちらに決めました。

不動産エージェントはなにしろ自由

松村:
実際、不動産エージェントとして働いてみて拘束時間が長いとか、売上のことで詰められるようなことはなかったのですか?

Nさん:
なかったです。
何時から何時まで働くとかいうことは基本、自分の自由ですし、売上のことで口を出されるようなことも一切なかったです。
というか、基本的に会社の方から連絡があることがなかったので。

松村:
会社の方から連絡はないのですか?

Nさん:
はい、基本、ないですね。
こちらから契約に関することなどで連絡をとることがあるのみです。

きよわい左

そこまで自由なんですね。どうりで新しい働き方として注目されるわけだ。

収入に関する厳しい現実

松村:
ということは、不動産エージェントは一応、Nさんの希望通りの働き方だったということでしょうか?

Nさん:
まあ、時間的な拘束がないとか、売上のことを色々と言われたりすることがないという点に関してはそうですね。
でも、その代わり売上がないと給料が出ませんから
生活していくのは、かなり大変でした。

松村:
収入が不安定になるということですね。
不動産エージェントは基本、完全歩合給だから、まあ、しょうがないですよね。
ちなみに平均月収はどれくらいだったのですか?

Nさん:
どれくらいだろ。
ほとんどの月、収入ゼロでしたから平均月収と言われるとちょっと考えてしまいます。
1年ちょっと、やってたんですけどその間の収入の合計が180万くらいでした。

松村:
1年ちょっとで180万ですか。
それはかなり厳しいですね。

Nさん:
貯金を切り崩しながら、どうにかやってた感じです。

松村:
歩合は何パーセントだったのですか?

Nさん:
私が働いていた会社は80%でした。

松村:
歩合80%で年収180万って売上、少なすぎませんか?
ごめんなさい、失礼な話ですけど。

Nさん:
集客が全然、できなかったもので。

きよわい左

年収180万はいくらなんでも少ないなあ。アルバイトでも、もっと稼いでいる人がいそうな気がする。

集客は基本、自分でやる

松村:
集客は不動産エージェントが自分でやるんですか?
会社からの集客に関するサポートは一切なし?

Nさん:
うちの場合は、ほぼ、そう言っていい状況でした。

松村:
だとしたら、自分で独立開業しているのと状況としては全然、変わらないですよね。

Nさん:
今から、思えばそういうことになると思います。

松村:
ちなみに収入が発生しているということは何件かは成約はされていることと思うのですが、そのお客さんはどうやって集客したのですか?

Nさん:
3件、成約しているのですが全部、親戚とか知り合いとです。

松村:
なんか保険レディの話を思い出しますね。
親戚や知り合いを一通り、勧誘してまわって、それ以上、お客さんをとれなくなったら、辞めるしかなくなるという話。
聞いたことありません?

Nさん:
実は私も途中からそう思ってました。
自分たちは集客のために利用されているだけなんだろうなって。
保険レディと違って、固定給が1円もないので、売上が作れなくても辞めるしかなくなったりはしませんが。

きよわい左

集客は自分でやるのか。僕だと一人のお客さんも成約できないうちにドロップアウトすることになりそう。

どう集客するかが最大の悩みどころ

松村:
その点は余計にタチが悪いかも。
上からの圧がない分、余計にズルズル続けることになりそう。
すいません、話を集客に戻しますね。
通常の集客活動はやっていなかったのですか?

Nさん:
一応、SNSとか無料ブログぐらいはやっていました。

松村:
独自でホームページを作ったりとか、チラシを入れたりとかは?

Nさん:
やっていません。

松村:
それはなぜですか?

Nさん:
うーん、どう説明したらいいかわからないのですが、どういう立場でホームページを作ったり、チラシを作ったりすればいいのか、よくわからなくって

松村:
そうか、あくまでご自身が宅建業の免許を受けているわけではないですもんね。
不動産屋の営業マンは普通、会社のホームページとは別に、自分独自で営業マンとしてのホームページを作ったりはしない。
それと同じような話ですよね。

Nさん:
独立しているようで、独立していない。
そのことが集客活動を難しくしている側面はあると思います。
信頼性も微妙ですしね。
不動産屋の社長でも社員でもないくせに、その会社の免許で営業しているわけですから。
普通に考えれば「どういうこと?」ってなりますよね。

成功している不動産エージェントはどう集客しているのか?

松村:
なるほど、かなり呑み込めてきました。
ちなみに不動産エージェントとして集客に成功しているお知り合いはいらっしゃいませんか?

Nさん:
いません。
不動産エージェントをやっていた知り合いが一人いますが、その人も私と似たような状況だったようなので。
ただ、ネットで色々と見ていると不動産エージェントで稼げている方もいらっしゃるみたいですよ。

松村:
その方たちはどんな方法で集客されているんでしょうかね。

Nさん:
詳しいことはわかりませんが、SNSとか見ている限り、かなりコミュニケーション能力の高さの人だったので、知り合いがたくさんいて、その人たちから案件をとっている感じじゃないでしょうか。
あと、異業種交流会なんかでお客さんになりそうな人を探すようなこともやっているみたいです。
ホームページを作ったりとか、チラシをまいたりとかいった集客法ではないと思います。
ホームページを見てみたいと思って、名前を検索しましたが、それらしいものを発見することはできませんでしたから。

松村:
生き残るタイプも保険レディと一緒ですね。

Nさん:
そうかもしれません(笑)

まっちゃん先生左

「どう集客するか」が不動産エージェントとしての成否を分けることのなりそうです。お客さんになってくれそうな知り合いが多くない人は、この点をどうクリアするかを、ちゃんと考えた上で参入の是非を検討するべきでしょう。

不動産エージェントのメリットは?

松村:
では、ここから不動産エージェントになることを検討されている方に、そのための判断材料になるような質問をいくつかさせて下さい。
まず、Nさんの考える不動産エージェントという働き方を選択するメリットをお教えいただけますか?

Nさん:
一番感じたメリットは自由なことでしょうか。
就業時間が決まっているとか、どうとかいう以前に、その日働くか働かないかも自由に決められてしまいますので
口うるさい上司もいませんし。

松村:
それ以外には?

Nさん:
自分で不動産屋を開業する場合にくらべて免許を受けるためのお金や手間がかからないのもメリットと言えると思います。
あと、辞めるのも、ものすごく気軽でした。

松村:
なるほど。
他にはありませんか?

Nさん:
うーん、すぐに思いつくのはそれぐらいですかね。

不動産エージェントのデメリットは?

松村:
了解です。
では、デメリットの方も教えて下さい。

Nさん:
デメリットというか不満になるかと思うんですが結局、集客を自分でしないといけないことですかね。
もう、ちょっとは会社の方で集客をやってくれると良かったと思います。
当初、多少、お客さんを振り分けるような話があったんですけどね。
全くなかったですから。
さっきも言いましたが、不動産エージェントって結局、立場が微妙で自分で集客するのが難しいので。

松村:
他には?

Nさん:
集客できないこととつながる話になりますけど収入が不安定というか、すごく低くなることですかね。
もちろん、稼いでいる人もいると思いますが、平均的には自分で不動産屋をやるか、不動産屋で働くかする方が収入はかなり高くなると思います。
私も今、エージェントをやっていた時の3倍くらいには収入が増えていますので。

※Nさんは現在、某不動産会社に勤務されています。

きよわい左

自分で集客できる自信がなければ、普通に不動産屋で働く方が無難かも。

不動産エージェントの向き・不向きについて

松村:
収入は大事ですよね。
では次に不動産エージェントは、どういう人が向いているのか、逆にどういう人は向いていないのか、教えて頂けますか。

Nさん:
向いているのはコミュニケーション能力が高くて、お客さんになってくれそうな知り合いがたくさんいる人、もしくは、そういう人をたくさん作れる人ですね。
たぶん、そういう集客の仕方しかできませんので。
逆に知り合いが少ない人とか、新たに人と仲良くなったりするのが得意でない人は向いていないと思います。
私自身もその一人ですが。

松村:
他に向き、不向きを分けるポイントがあれば教えて下さい。

Nさん:
自由過ぎるので自己管理ができる人の方がいいと思います。
私も人から色々、言われるのが嫌なくせに、言われなければ、言われないで、楽な方向に延々と流れていってしまってダメでした。

松村:
そんなこと、なさそうですけどね。
宅建だって、ちゃんと一発で合格されてますし。

Nさん:
勉強みたいなことだと、そこそこ自分をコントロールできるんですが、仕事となると色々、いい訳を考えて行動を起こせなくなってしまうんですよね。

松村:
その感覚はちょっと、わかります。
私自身も仕事となると自分をコントロールしにくくなってしまうところがあるので。

Nさん:
自己完結できることなら頑張りやすいんですが、相手のあることは頑張りようも難しいですからね。

実務経験を積む場所としては、どうか?

松村:
すごくわかります。
私と性格的に似ているかも(笑)
では続けて質問させて下さい。
これ、結構、よくお受けする質問なので、経験者として率直なご意見をお聞かせ下さい。
ズバリ、不動産エージェントは実務経験を積む場所としては、どうですか?

Nさん:
正直なところ微妙だと思います
結局、私も3件しか取引できていませんし。
しかも近しい人ばかりだったので、実務経験と言えるほどの経験になったのかなと。
実務経験を積む場所というより、どちらかと言うと実務経験を活かす場所ですね。
今まで固定給のある不動産屋で働いていたけど、フルコミッションでやりたいという人向きなんじゃないでしょうか。

松村:
なるほど。
実務経験を積むなら不動産屋で正社員として働く方がいいと思いますか?

Nさん:
そう思います。
何かわからないことがあった時に質問できる人がそばにいるのは大きいですよ。
先輩たちが仕事として何をやっているのかを見ることもできますしね。

まっちゃん先生左

ちなみに不動産エージェントの会社の中にも実務に関する質問ができる環境を用意している会社があるようです。実務経験がない方、もしくは乏しい方はそういう会社を選ばれることをおすすめします。

不動産エージェントになるべき人は、こういう人

松村:
最初から不動産屋で普通に働く方が良かったですか?

Nさん:
少なくとも私の場合はそうだったでしょうね。
ただ不動産エージェントという働き方を否定する気もないです。
実務経験あって、お客さんになるような知り合いがたくさんいる人なら稼げるのは間違いないでしょうから。

松村:
でも、そんな人なら自分で不動産屋として独立する方がよくないですか?
ピンハネされない分、稼ぎは大きくなりますし。

Nさん:
まあ、たしかにそうですね。
でも自分で不動産屋をやると、そこに縛られてしまうじゃないですか。
そういうのが嫌で自由というか身軽でいたいという人には、ピッタリな働き方だと思います。

松村:
実力があって、その実力にふさわしい報酬を得たいけど、何にも縛られず自由でいたい。
そういう人向けの仕事って言うことですかね。

Nさん:
そういうことですね。
当時の私みたいに実力のない者では、到底、生き残ることができない厳しい環境ではありますが

松村:
すごくよくわかりました。
やっぱり経験者の話は貴重ですね。

Nさん:
いや、これで参考になりますか?
私みたいに全然、結果を出せなかった人間の話で大丈夫だったのでしょうか。

松村:
いえいえ、全然いいんです。
あくまで今回のインタビューの目的は不動産エージェントの現実を教えてもらうことだったので。
結果が出ているとか、出ていないとかは関係ありませんので。

Nさん:
であればよかったです。

松村:
本当に本日はお忙しい中、お時間を頂戴し、本当にありがとうございました。

Nさん:
いえいえ、お役に立てたようなら、よかったです。
また、何か追加で聞きたいことがあれば、おっしゃって下さい。

松村:
はい、その際はお言葉に甘えます。
逆にNさんの方でこの機会に何か私に聞いておきたいことがあったりしませんか?

Nさん:
あっ、いいんですか?
実は・・・・(ここから先は今回のテーマと関係のない話なので割愛させていただきます。)

補足

その他、不動産エージェントに関する重要情報を補足しておきます。

会社との契約形態について

会社との契約形態については業務委託契約とすることが主流のようです。

一部、委任契約や請負契約などを採用しているところもあるようですが。

いずれにしても雇用契約ではありませんので国民年金や健康保険については自分で加入することになります。

雇用されていない以上、雇用保険には加入できませんし、原則的に労働基準法の適用もありません。

要するに自由ではあるものの、責任は全部、自分でとる必要があるということです。

きよわい左

言われてみれば当たり前の話だけど、雇用保険にも加入できないのか。やるなら、ちゃんと自営業者としての自覚を持つ必要がありそう。

免許貸しなのでは?

不動産エージェントに関して、よくお受けするご質問の一つに「これって宅建業法の免許貸しの禁止規定に違反するのでは?」というものがあります。

結論から申しますと、お客さんは、あくまで宅建業の免許を受けている会社と媒介契約を締結していて、不動産エージェントはお客さんに購入や売却についてのアドバイスをしているだけですよ、という体裁をとるのであれば違法とまでは言えないものと考えます。

新しい働き方のような印象がありますが、不動産エージェントというのは要するに昔からある、いわゆるフルコミ社員(フルコミはフルコミッション(完全歩合)の略)と特に変わりありませんしね。

ただ、不動産エージェントはフルコミ社員と比べても、あまりにも会社との関係性が薄すぎるので(従来型のフルコミ社員はそれなりに不動産屋の事務所に顔を出すので緩やかながら不動産屋の支配下にあるものと考えやすい)、今後、問題視される可能性はあります。

宅建業法の免許貸しの禁止規定がほとんど意味のないものになってしまいますしね。

少なくとも不動産エージェントとして働く場合、お客さんに自らが宅建業者の社長や社員であると誤認させることがないよう、十分、注意する必要があると思います。

まとめ

めちゃくちゃ自由だけど、実力がないと食べていくのはめちゃくちゃ厳しい

不動産エージェントの現実をぎゅっとまとめてしまうと大体、こんな感じでしょうか。

正直なところ、これまで、わざわざ不動産エージェントという働き方をする人の気持ちがよくわかっていませんでした。

単純に「宅建、持ってるなら、自分で免許、受けて開業すればいいのに」と思っていたんですよね。

でも、今回、不動産エージェント経験者の話を聞いて、少しわかったような気がします。

「会社に縛られるのは嫌だけど、自分で宅建業の免許を受けて事務所まで構えるのはちょっとなあ」

自分で免許を受けて事務所まで構えたら、今度はその事務所に少なからず縛られることになってしまいますからね。

「なにしろ、何にも縛られず自由でいたい」

不動産エージェントは、そういう価値観を持つ人にとってはピッタリな選択なのかもしれません。

食べていくのはかなり大変っぽいですが、そこは自由の代償ということで。

営業マンとしての実力に自信のある方は一つの選択肢として検討されてみてもいいのかなと思います。

以上、今回は「不動産エージェントの現実についてのインタビュー」をお届け致しました。

まっちゃん先生左

比較検討のために不動産屋として独立開業した人の話も聞いてみたいという方は、こちらの記事をどうぞ!きっと、参考にして頂けるはずです。

不動産屋を開業してみた。経験者が語る本音、正解?それとも失敗?