こんにちは松村です。
先日、独立開業予定者向けのスポットコンサルの中でこんなご質問を頂戴しました。
「私が住んでいるのは〇〇県△△市という結構な田舎なんですが、そんな場所で不動産屋を開業してやっていけるものでしょうか?お隣の☓☓市になると、人口も2倍ぐらいになるし、そちらで開業する方がまだマシなのかなとも思ったりするのですが、いかがでしょうか?」
地方にお住いの方の中には同じようなことで悩まれている方、結構、多いのではないでしょうか。そこで、本日は「田舎の不動産屋は儲かるのか?」ということについて私なりの考えをお伝えしたいと思います。
田舎で不動産屋を開業することを検討されている方は是非とも参考になさって下さい。
田舎の不動産屋は儲かる?儲からない?

結論から言いますと田舎の不動産屋は「都会の不動産屋ほど儲けやすくはない」ということになるかと思います。都会と田舎では物件価格が違いすぎますからね。
たとえば東京なんかでは1億円の中古マンションの取引なんかもざらにあるわけで片手仲介でも正規手数料なら306万円、両手仲介ともなれば612万円もの売上が立つわけです。
田舎だとこれだけの売上を得ようと思えば何件の取引をやらなあかんねんという話ですよね。5、6件やっても、まだ届かないということもざらにあるんじゃないでしょうか。
もちろん、田舎の場合、都会に比べてライバルが非常に少なくなるので、成約率は高くなるでしょう。でも、そもそもの取引需要が小さいし、圧倒的な顧客単価の差はまず埋まるものじゃない。
田舎で不動産屋を開業することを検討されている方は、そのことを十分に考慮した上で開業の是非をご判断いただければと思います。
田舎の不動産屋が儲けるためのアイデア
ここまでの内容を踏まえてもなお、田舎で不動産屋として開業することをあきらめたくないという方もいらっしゃることでしょう。
そこで以下、田舎で不動産屋として独立開業し、儲けていくためのアイデアをいくつか紹介したいと思います。少しでも成功確率を上げるための参考にして頂ければと思います。
買取再販に力を入れる
買取再販とは一般の方から、不動産を買取り、リフォームを施すなどした上で再度、販売するというスキームのことを言います。たとえば300万円で買い取った家を200万円かけてリフォームし800万円で販売するようなことですね。
買取再販の場合、仲介の場合のように物件価格によって収入の大小が決まってしまうわけではないので田舎の不動産屋さんにとっては是非とも取り入れたい儲け拡大の手段と言えると思います。
買取再販のメリットとデメリット
以下、買取再販に関するメリット・デメリットをそれぞれ簡単に指摘しておきます。実際に取り組むかどうかの判断材料として下さい。
メリット
一取引あたりの儲けの額が大きくなる
儲けの額は200万円~500万円ぐらいの範囲になることが多いようです。ちなみにうちの過去のクライアントの中には無料で引き取った中古戸建をほぼ手直しせず300万円ほどで売却した強者もいます。
デメリット
買取のための資金が必要になる
ちなみに買取資金については、ある程度の取引実績があれば金融機関から融資によって用意することも可能です。自己資金で用意することが難しい場合には金融機関に相談してみて下さい。
売れ残りリスクが発生する
買い取ってリフォームまでした物件が、なかなか売れずに資金繰りが厳しくなる可能性があります。状況によっては損切りすることも覚悟しなければなりません。
契約不適合責任を負う必要がある
宅建業者が売主となる場合、最低でも引渡しの日から2年間の契約不適合責任を負う必要があります。買主からの損害賠償請求等に備えるべく保険に加入しておかれることを強くおすすめします。
なお、メリットとデメリットの数だけを単純に比較すると買取再販には手を出さない方が良さそうな気がするかもしれませんが、メリットが非常に大きいものなので、それでもなお、取り組むことを検討されるべきかと思います。大事なのはデメリットの存在を認識し、それに気持ち的にも経済的にも事前の備えをしておくことです。
リフォーム工事受注に力を入れる

不動産取引に付随して発生するリフォーム工事の受注によって利益を上積みしていこうということです。
田舎の場合、不動産価格が安いため、都会に比べて仲介手数料は安くなってしまいがちですがリフォーム工事で得られる利益については都会に比べて不利になることはありません。いや、むしろ競合が少ない分、相見積もりとなる可能性が低く、儲けやすいはずです。
その環境的優位を活かすべく、必ずリフォーム工事の受注にも取り組んで頂きたいと思います。
なお、リフォーム工事の施工自体は自社でやる必要はありません。自社が元請になる場合でも、実際の工事は協力業者にやってもらえばいいだけなので、その点はご安心を。
また、自社が受注するのでなく、リフォーム業者にお客さんを紹介してリフォーム業者から紹介料をもらうというのも一つの方法です。
リフォーム工事受注のメリットとデメリット
リフォーム工事受注のメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット
顧客単価が上がる
リフォーム工事の分、確実に顧客単価が高くなります。田舎の場合、リフォーム工事から得られる利益が仲介手数料の2倍とか3倍になることも結構、多いはずです。
デメリット
リフォーム業者としての対応が必要になる
リフォーム業者として工事内容のヒアリングや見積もり、クレーム対応等をしなければならなくなります。
なお、自ら受注するのではなく、リフォーム業者にお客さんを紹介するだけなら、リフォーム業者としての対応は不要です。
※受注金額500万円以上のリフォーム工事を受注するには原則的に建設業の許可を受ける必要があります。法令違反により宅建業者としての営業にまで影響が出ることがないよう十分、注意して下さい。
民泊運営に取り組む
田舎ではあるものの観光資源が豊富な土地で不動産屋を開業される場合には同時並行的に民泊に取り組むというのも効率的に利益を上積みできる方法です。
せっかく不動産屋という優良物件情報をいち早くキャッチできる立場にあるのですから、その優位性をしっかりと活かしましょう。
物件数が増えてくれば、不動産屋だけでは難しい毎月の収入の安定化も実現できるはず。資金繰りに余裕ができたら是非とも取り組むことを検討して下さい。
民泊のメリットとデメリット
メリット
ハイリターンが期待できる
民泊はうまくいけば一般的な不動産投資の何倍もの利回りが期待できます。
もちろん、民泊は宿泊サービス業であり、一般的な不動産投資と単純比較することはできませんが、初期投下資本を2年程度で回収したという事例も多くあり、魅力的な取り組みであることは間違いありません。
デメリット
購入のための資金が必要になる
物件購入やリフォームのための資金が必要となります。ただし民泊については賃貸物件を転貸するという形で始めることも可能であり、その形であれば必要資金額をかなり圧縮することができます。
民泊運営の手間がかかる
民泊は宿泊サービス業ですので、予約の受付や、チェックイン対応等が必要であり、それなりに手間がかかります。都会であれば、これらの対応業務をアウトソーシングすることも可能ですが、田舎の場合、そういった業者を利用することも難しいでしょうから、どのように人手を確保するのか等を事前に検討しておかなければなりません。
民泊自体がうまくいかない可能性がある
民泊もビジネスですから、諸要因でうまくいかないことが当然あります。また当初はうまくいっていても、政治的な理由や為替レートの変化等により、民泊需要が大きく減少するようなことも考えられます。
要注意

あと田舎で不動産屋を開業する時に一つ気をつけて欲しいことがあります。それは田舎ではレインズへ物件登録義務が守られていない地域が結構、多いということです。
酷い地域になると全体の3割程度しか登録されていないということも。つまり特に開業当初はお客さんに紹介できる物件がなくて苦労する可能性があるということです。
実際、うちの過去のクライアントの中にもこのことを知らずに独立して大いに苦労した方が結構、いらっしゃいました。だから開業するまでに必ずレインズの登録状況はチェックしておいた方がいいです。
物件ポータルサイトなどから推測される物件の流通数に比べてレインズでの登録物件数があまりに少ない場合にはよほど、慎重に開業するかどうかを検討した方がいいものと考えます。
まとめ
本文中でもお伝えしたとおり「田舎の不動産屋は都会の不動産屋ほど儲けやすくはない」です。
ただまあ、再販買取だとかリフォーム工事受注に力を入れるとかいった工夫をすれば食べていけるぐらいの状況は全然、普通に達成できると思います。事前にどうやって稼いでいくのかを十分に検討し「これならいけそう」という目途をつけることができたなら、勇気を持って不動産屋開業に踏み切って下さい。
以上、今回は「田舎の不動産屋は儲かるのか」というテーマでお送りしました。ほな、また!





