今回は不動産屋としての独立は個人と法人(会社)どちらにすべきか、というテーマについてお話してみたいと思います。
特に資金的に余裕がない場合には個人での独立に気持ちが傾きがちだと思いますが、果たしてどちらの方が、より良い選択なのでしょうか?
これまで多くの方の独立を支援してきたコンサルタントとしての立場から、個人と法人、どちらで独立する方が良いのかについて自分なりの考えをお伝えしたいと思います。
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個人で独立する場合のメリット・デメリット
不動産屋としての独立は個人と法人、どちらですべきなのか、その結論を出す前提として、まずは、それぞれの場合のメリット・デメリットを整理しておきたいと思います。
まずは個人で独立する場合のメリット・デメリットから見ていきましょう。
メリット
個人で独立する場合のメリットは以下の2つです。
①費用負担が軽い
個人で独立する場合、法人設立の費用が不要ですので、その分、独立時の費用負担が軽くなります。
具体的な費用軽減額は次の式で計算することができます。
法人設立費25万円+資本金分
ちなみに株式会社の資本金の最低金額は1円とされています。
また、個人で独立する場合、経理や確定申告も簡単なので、その部分を自分でやるのであれば税理士への報酬の支払いも不要となります。
②儲かっていない間の税負担が軽い
個人で独立する場合、事業所得等に対して所得税が課税されることになりますが、所得税は課税所得金額が少ないと税率が低くなる仕組みのため、あまり儲かっていない間は税負担が軽くなります。
課税所得金額がゼロであれば所得税を納付する必要はなく、住民税も均等割のみの負担(標準税額は市町村税・道府県税、合わせて5,000円)となります。
※参考 所得税率一覧 | |
---|---|
課税所得金額 | 税率(控除額) |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5%(0円) |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10%(97,500円) |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20%(427,500円) |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23%(636,000円) |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33%(1,536,000円) |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40%(2,796,000円) |
40,000,000円以上 | 45%(4,796,000円) |
デメリット
個人で独立する場合のデメリットは以下の3つです。
①信用度が低い
個人と法人を比べた場合、一般論として、個人の方が信用度は低くなります。
法人の方が、経済的基盤がしっかりしているイメージがあるためです。
不動産屋の場合、扱うものが非常に高額であるため、余計に信用度が低いということが大きなデメリットになりえます。
②儲かり出すと税負担が重くなる
所得税は課税所得金額が増えると税率が高くなる仕組みのため(累進課税制度)、儲かり出すと税負担が重くなります。
課税所得金が330万円以上694万9千円以下となると所得税率は20%となり、資本金1億円以下の中小法人が所得金額800万円以下の場合の法人税率19%を超えることになります。
つまり、ビジネスが少しうまくまわりだすと、すぐに個人の方が税負担が重くなるということです。
③法人成りする際に免許番号が変わる
とりあえず個人で宅建業を始めて、ある程度、儲かり始めたら法人成りしようと考える方が多いと思いますが、個人から法人に免許を引き継ぐということはできません。
(相続等があっても、個人から個人に引き継ぐこともできません。)
つまり、その場合、新たに免許申請をしなおすことになり、宅建業の免許番号が変わってしまうことになります。
そして、その際には、当然、免許の更新回数を表す()内の数字も1に戻ってしまいます。
このことを見込み客がどの程度知っているのか、ということについては正直、疑問が残りますがデメリットと感じる方が多いようなので、一応、取り上げておきます。
法人(会社)で独立する場合のメリット・デメリット
不動産屋として法人で独立する場合のメリット・デメリットは個人で独立する場合のメリット・デメリットを、ほぼ、そのままひっくり返したものです。
一応、以下にあらためて解説します。
メリット
法人で独立する場合のメリットは以下の3つです。
①信用度が高い
個人と法人を比べた場合、法人の方が信用度は高くなります。
一般的に法人の方が、経済的基盤がしっかりしていると考えられるためです。
②儲かっても税負担がそんなに重くならない
個人の場合、所得税については累進課税制度が採用されているため、儲かれば儲かるほど、税負担が重くなっていきますが(税率は最大45%(課税所得4000万円以上))、法人の場合、法人税率については、23.2%に固定されており、それ以上、上がることはありません。
(資本金1億円以下の中小法人で所得金額が年800万円以下の場合は19%)
もちろん、法人の場合、個人に給与を出せば、その段階で、あらためて所得税を納める必要がありますので、所得税と法人税の税率だけで、どちらが有利になるかを単純比較はできません。
しかし、仲介を主たる業務とする不動産屋さんの場合、売上が1000万円を超えるレベルになれば、9割がた、法人の方が税負担が軽くなるはずです。
③事業を引き継ぐことができる。
法人の場合も宅建業の免許を他の法人や個人に引き継ぐということはできません。
しかし、法人自体を譲ることによって、実質的に宅建業の免許および事業を引き継ぐことができます。
なお、宅建業の免許を受けている法人を吸収合併した場合にも吸収した側の存続法人が免許を引き継ぐことは認められていません。
デメリット
法人で独立する場合のデメリットは以下の3つです。
①費用負担が重い
法人設立費25万円+資本金分、費用負担が重くなります。
また、法人の場合、経理及び確定申告業務が複雑で、自分でやるのは、かなりハードルが高いです。
そのため、それらの業務を依頼するため、税理士への報酬を余分に負担しなくてはならなくなります。
②儲かっていない間の税負担が重い
法人税の税率は固定税率で、資本金1億円以下の中小法人であっても、所得に対して最低19%の税金が課されます。
もちろん、所得金額がゼロであれば法人税はかかりませんが、その場合であっても法人住民税の均等割分の7万円は必ず、負担することになります。
個人・法人、結局どちらでの独立がおすすめなの?
結論から申しますと個人ではなく、法人で独立することをおすすめします。
個人で独立する場合と法人で独立する場合を比べた場合、明らかに法人で独立する場合の方がメリットが大きく、また、デメリットは小さいからです。
法人で独立する場合のデメリットの一つとして、儲かっていない間の税負担が重いことを挙げましたが、この点に関しても、独立してすぐに儲かるようにしてしまえば、特に問題にはなりません。
独立前から戦略を練り、正しい方法で集客に取り組めば、それほど期間をかけずに儲かるようになるはずですので、あまり心配せずに法人でスタートして下さい。
よくある質問
個人での独立に関して、よくお受けするご質問と当方からの回答を紹介しておきます。
資金的な問題で、それでも個人での独立を検討したいという方は、参考になさって下さい。
Q 個人で独立するというのは、どういう意味ですか?
宅建士の資格があれば、宅建業者として営業できるということでしょうか?
A 個人で独立するというのは、個人が宅建業者として免許を受けて独立することを意味します。
宅建士の資格と宅建業者としての免許はあくまで別ものです。
宅建士の資格があることは宅建業者としての免許を受けるための一要件に過ぎず、宅建士の資格があるだけで宅建業ができるわけではありません。
個人・法人を問わず、宅建業を営むためには宅建業の免許を受ける必要があります。
Q 個人で独立する場合、独立する本人が宅建士でないとダメなのですか?
A いいえ。
独立する本人が宅建士でなくても宅建資格を保有するものを雇用し、専任の宅建士とすることによって宅建業の免許を受けて独立することができます。
Q 個人と法人で宅建業者としての業務の範囲等に違いはあるのですか?
A 全くありません。
ちなみに都道府県知事免許と国土交通大臣免許の間にも業務範囲等の違いはありません。
まとめ
1.個人で独立する場合のメリットとしては①費用負担が軽い②儲かっていない間の税負担が軽い、といったことが挙げられる。
デメリットとしては①信用度が低い②儲かり出すと税負担が重くなる③法人成りする際に免許番号が変わる、といったことが挙げられる。
2.法人で独立する場合のメリットとしては①信用度が高い②儲かっても税負担がそんなに重くならない③事業を引き継ぐことができる、といったことが挙げられる。
デメリットとしては①費用負担が重い②儲かっていない間の税負担が重い、といったことが挙げられる。
3.結論としては個人より法人で独立する方が良い。
法人で独立する方がメリットが大きく、デメリットは小さい。
4.個人で独立するといっても不動産屋をやる以上、宅建業の免許は必要。
宅建資格があることは免許を受けるための一要件に過ぎない。
5.自らは宅建資格を持っていない者も宅建資格を持っている者を雇用することによって、個人で宅建業の免許を受けて独立することができる。