こんにちは、松村です。
以前、拙著の読者の方からお手紙をいただきました。ご相談の趣旨は「宅建試験にすでに3回落ちていて恥ずかしい。これ以上勉強しても、たぶん合格できないと思う。もう諦めた方がいいのか」というものでした。
宅建試験に落ちたとき、結果そのものより「周りにどう思われるか」が気になってしまう人は少なくありません。宅建講座の講師をしていた頃も、受講生から同じような声をよく聞きました。
結論から言うと、宅建試験に落ちるのは恥ずかしいことではありません。何度落ちていても同じです。ただし、落ち続けているなら、それは運だけでは説明できません。勉強の中身に原因があります。
この記事では、宅建に落ちても恥ずかしくない理由、何度も落ちてしまう原因、落ちた後に考えておきたいことを、元講師の立場から本音でお伝えします。不動産会社で働きながら受験している方に向けたメッセージも用意しています。
読み終える頃には、恥ずかしさに振り回されず、続けるかやめるか、続けるなら何を変えなければならないのかを、自分で判断できるようになるはずです。
宅建に落ちるのは恥ずかしいことではない

冒頭でもお伝えしたとおり、宅建試験に落ちるのは、恥ずかしいことではありません。
その理由は、試験の数字を見ればわかります。
受験者の8割以上が落ちる試験
令和7年度(2025年度)の宅建試験は、受験者245,462人に対して、合格者は45,821人でした。合格率は18.7%です。つまり、受験した人のうち約20万人が不合格になっています。
この年だけが特別に厳しかったわけではありません。直近10年の合格率は、13.1%〜18.7%の間で推移しています。毎年、受験者の8割以上が落ちていることになります。
落ちた人の方が圧倒的に多いのですから、落ちたことを恥じる必要は全くありません。
「簡単な試験」というイメージが実態とずれている理由
ところが、世間では今も「宅建くらい受かって当然」「落ちたら恥ずかしい」という声を耳にします。合格率がこれだけ低いのに、なぜそう言われるのでしょうか。
一つは、法律系の国家資格の中での位置づけです。法律系の国家資格には、司法試験や司法書士試験のように、極端に難易度の高いものが並んでいます。それらと比べると、宅建は確かに入門編的な資格です。しかし、それは比較の相手が難しすぎるからであって、宅建そのものが簡単なわけではありません。資格試験全体で見れば、宅建はむしろ難しい部類の試験です。
もう一つは、本当に簡単だった頃のイメージが残っていることです。宅建試験が始まった1958年の合格率は93.0%、1959年は98.2%、1960年は83.1%でした。今とはまったく別の試験と言ってよい数字です。
実際には、1980年代以降、合格率が20%を超えたのは1982年の一度だけです。それにもかかわらず、初期の「誰でも受かる試験」という印象が、今も根強く残っています。
さらに、自分の一発合格を自慢したい人が「宅建なんて簡単」と口にすることもあります。たしかに、一発合格は立派なことです。しかし、だからと言って8割以上が落ちる試験を簡単と言い切るのは、実態とかけ離れています。
ネット上の声にも、実態からかけ離れたものが少なくありません。この記事を最初に書いたとき、ネット上の書き込みを調べてみました。すると、宅建に落ちることどころか、宅建を受けること自体が恥ずかしいという意見まで見かけました。こうした声は、試験の実態を知らない人の印象にすぎません。真に受ける必要はありません。
宅建の難しさについてはこちら:宅建合格は頭いいの?5000人超の受験生を指導した元講師がズバリ回答
何度も落ちても恥ずかしくない。ただし原因はある

「1回落ちるくらいなら仕方ない。でも、何度も落ちるのはさすがに恥ずかしいのでは」。そう感じている方もいると思います。
落ちた回数に関係なく、恥ずかしがる必要はありません。ただし、何度も落ちているなら、運が悪かっただけとは言えません。おそらく勉強の中身に原因があります。
1回の不合格には、運の要素もある
宅建試験は年に1回しか実施されません。当日の体調や緊張、迷った問題で選んだ肢が当たるかどうか、その年の出題との相性。こうした要素で、1点や2点は簡単に動きます。
実際、合格点にあと1点、2点届かずに落ちる人は、毎年少なくありません。実力が同じくらいの人でも、合否が分かれることがあるのです。1回落ちただけなら、単に運が悪かっただけということも十分あり得ます。
何度も落ちるなら、運では説明できない
ところが、2回、3回と落ち続ける場合は話が変わります。運は毎年ばらつくものです。実力が合格ラインに届いているなら、何度か受けるうちに一度くらいは運が味方してくれるはずです。
それでも落ち続けるのは、まだ実力が合格ラインに届いていないからです。特に、毎年似たような点数で足踏みしている人や、合格点まで何点も足りない人は、運のせいにはできません。
では、なぜ合格ラインに届かないのか。落ち続ける人の多くは、宅建の難易度を見誤っています。
宅建の合格率は2割を切っています。つまり、合格するには受験生の上位2割弱に入らなければならないわけです。しかも、その受験生は、わざわざ宅建試験を受けてみようと思うような向上心旺盛な人たちです。「それなりに勉強した」程度では、とても届きません。
受験生が頑張っていること自体は間違いありません。しかし、自分なりの頑張りと、合格に求められる頑張りがかけ離れている。だから結果が出ないのです。難易度を甘く見たまま勉強の量や中身を決めてしまうと、何年続けても合格には届かないことになってしまいます。
4回以上落ちているなら、勉強のやり方を根本から変える
4回以上落ちているなら、今の勉強のやり方そのものに問題があると考えた方がよいでしょう。同じやり方のまま勉強時間だけを増やしても、結果はまず変わりません。必要なのは部分的な手直しではなく、やり方を根本から見直すことです。
落ち続ける人には、勉強の範囲を広げすぎている、テキストを読むことが中心で過去問学習が足りていない、過去問の答えを覚えただけで実力がついたと勘違いしている、といったケースがよく見られます。どれも、宅建の難易度を正しくつかめていないことから生まれる過ちです。
では、どう変えればよいのか。出発点は、宅建の難易度を正しく受け止めることです。上位2割弱に入らなければならない試験だという前提に立って、勉強の量と中身を組み立て直します。
具体的には、出題範囲を頻出の論点に絞り、勉強の中心をテキストから過去問に移します。過去問は答えを覚えるのではなく、なぜその肢が正しいのか、誤りなのかを説明できるまで理解を深めてください。
落ち続ける原因をさらに詳しく知りたい方や、来年の合格に向けた具体的な勉強の進め方を知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
宅建に落ち続ける原因と対策についてはこちら:宅建に受かる気がしない人へのアドバイス・これで来年は合格できる!
落ちた後、恥ずかしさより先に考えること

不合格がわかった直後は、恥ずかしさや悔しさで頭がいっぱいになるものです。しかし、本当に考えておきたいのは周りの目ではありません。来年も挑戦を続けるのか、続けるならいつからどう再開するのか、という点です。
続けるかやめるかは宅建を取る目的の有無で決める
続けるかどうかを決める基準は、宅建を取る目的がはっきりしているかどうかです。
不動産業界で働きたい、今の職場で宅建士として責任ある仕事を任されたい、いずれは不動産屋として独立したい。こうした目的がはっきりしているなら、続ける価値は十分にあります。宅建士でなければできない業務があり、不動産業界では宅建を持っているかどうかで、仕事の幅や選択肢が大きく変わるからです。
一方、目的がはっきりしないまま、なんとなく受け続けているなら、一度立ち止まって考えてみてください。働きながら宅建の勉強を続けるのは、正直なところ楽ではありません。モチベーションが低い状態で、上位2割弱に入るだけの勉強量を確保するのも難しいでしょう。
その場合、いったん挑戦をやめるのも一つの判断です。やめたからといって、恥ずかしいことは何もありません。目的が見つかったときに、あらためて挑戦すればよいのです。
宅建を取った後の道についてはこちら:宅建取得で人生は変わるのか?人生が変わった4人の実例と変わらない人の共通点
宅建を取ってすぐの独立についてはこちら:宅建とって、いきなり独立は可能か?根拠を持って持論を紹介するよ!
続けるなら、すぐに再開しなくてよい
続けると決めた人の中には、不合格がわかった翌日から勉強を再開しようとする人もいます。その意気込みは立派です。ただし、本格的な勉強の再開は翌年の4月からで十分です。
宅建の試験科目は、民法を除けば暗記が中心です。早くから勉強を始めても、10月の本番までに覚えたことを忘れてしまいます。それよりも、4月から試験までの半年間に集中して勉強する方が、効率よく実力をつけられます。
例外は、読解力が足りずに落ちた人です。問題文を正確に読み取れないと、知識があっても得点につなげることはできません。読解力は、短期間で身につくものではありません。そのため、4月を待たずに、早めにテキストの読み込みを始めてください。
そして、勉強を再開するときは、テキストも過去問も必ず新しい年度版に買い替えてください。出題範囲となる法律について、必ずと言っていいほど法改正があるからです。心機一転、ゼロから再スタートするつもりで臨むことが大切です。
勉強を再開する時期や、本番で問題を解く順番など、来年に向けた具体的な勉強の進め方・対策についてはこちらの記事で解説しています。
来年の宅建合格に向けた勉強法についてはこちら:宅建に受かる気がしない人へのアドバイス・これで来年は合格できる!
不動産会社で働いているなら、早めの合格を目指したい

ここまでお伝えしてきたとおり、宅建に落ちること自体は恥ずかしいことではありません。ただし、恥ずかしいかどうかとは別の話として、不動産会社で働きながら受験している人には、早めに合格しておきたい理由があります。
中堅以上の営業担当者が持っていないと、お客さんの信頼に関わる
重要事項説明は、宅建士にしかできません。宅建士でない人が行えば、宅建業法違反になります。
そのため、宅建を持っていない営業担当者は、取引の中で一番重要なはずの重要事項説明を、他の人に任せるしかありません。それまでさも何でも知っているかのように話していた担当者が、いざ重要事項説明の段になると交代する。お客さんの側から見れば、「本当にこの人に任せて大丈夫だろうか」と不安を感じても不思議ではありません。
それでも若手のうちは、まだよいのです。お客さんも「早く取れるといいですね」と好意的に受け止めてくれることでしょう。しかし、中堅以上になると見方が変わります。経験を積んでいるはずの担当者が宅建を持っていなければ、営業担当者としての資質や能力まで疑われることもあります。
中堅以上の営業担当者ほど、早めに合格しておきたいのはそのためです。
落ちたことで職場での立場はどう変わるか
では、宅建に落ちたことで、職場での立場はどう変わるのでしょうか。
まず、給与待遇の面です。多くの不動産会社では、宅建を持っている社員に資格手当を支給しています。宅建を持っていない間は、その手当を受け取れません。
さらに、昇進にも影響します。特に売買仲介が中心の会社で、宅建を持たずに店長になるのは、かなり難しいでしょう。宅建を持っている後輩が先に店長になり、その下で働くことになる。そんなやりにくい状況にもなりかねません。
宅建を持っていない限り、手当や昇進での差は広がり続けます。
まとめ|宅建に落ちるのは恥ずかしくない。何度も落ちるなら、やり方を変える

宅建試験は、毎年受験者の8割以上が落ちる試験です。落ちたことを恥じる必要は全くありません。「宅建くらい受かって当然」という声は、試験が始まったばかりの簡単だった頃のイメージや、一部の人の思い込みにすぎません。
ただし、何度も落ちているなら、運が悪かっただけとは言えません。落ち続ける人の多くは、宅建の難易度を見誤っています。上位2割弱に入らなければならない試験だという前提に立って、勉強の量と中身を見直してください。4回以上落ちているなら、勉強のやり方を根本から改める必要があります。
落ちた後に考えておきたいのは、周りの目ではなく、これからどうするかです。宅建を取る目的がはっきりしているなら、挑戦を続ける価値は十分にあります。目的がはっきりしないなら、いったんやめるのも一つの判断です。続ける場合、本格的な勉強の再開は翌年の4月からで構いません。再開するときは、テキストも過去問も新しい年度版に買い替えてください。
不動産会社で働いている人は、お客さんの信頼や給与待遇、昇進の面からも、早めに合格しておきたいところです。
宅建は、目的を持って挑戦する人にとって、非常に価値の高い資格です。試験に落ちたことの恥ずかしさに振り回されることなく、来年合格するために何をするべきかをしっかりと考えてください。





