今回は「宅建はオワコンなのか?」というテーマでお伝えしたいと思います。
前回「宅建に落ちるのは恥ずかしいことなのか」というテーマでお伝えしましたが、その記事を書くための意識調査をしている中で、「宅建はオワコンである」との意見をいくつか見かけたんですね。
で、私も不動産業界のことをよく知る者の一人として、その点に関して自分なりの意見を表明しておきたいと考えた次第です。
宅建業者専門の経営コンサルタント、あるいは元宅建講師として培ってきた知見を活かし、様々な角度から「はたして宅建はオワコンなのか、それとも閉じコン(オワコンの反対語、息子に教えてもらいましたw)なのか」ということを検討してみましたので興味のある方は是非とも最後までお付き合い下さい。
えっ、宅建ってオワコンなの?せっかく、とったのに嫌な話を聞いちゃったなあ。
宅建はオワコンなのか?それとも・・・
例によって結論からお伝えします。
宅建はオワコンではありません。
それどころか今なお、大変、有用な資格です。
現実に就職・転職の場面で大いに力を発揮しているからです。
もちろん、水戸黄門の印籠よろしく(たとえが古いかw)、宅建を持っているだけで面接担当者がひれ伏し即、採用となるわけではないでしょう。
しかしながら宅建を持っていることが大きなアドバンテージになることは間違いありません。
だから、「宅建はオワコン」などという妄言に惑わされず、興味があるなら取っておきましょう。
全員とまでは言いませんが、結構な割合の方に「宅建、取ってて良かったあ」と心底、思える日がやってくるはずです。
宅建がオワコンではないと言い切れる3つの理由
私が宅建はオワコンではないと言い切れる理由は以下の3つです。
- 就職・転職の場面で力を発揮してくれる
- 宅建士でないとできない業務がある
- 独立・開業もできる
以下、それぞれについて少し、詳しく見ていきましょう。
就職・転職の場面で力を発揮してくれる
上でも少し触れましたが宅建は就職・転職の場面で大いに力を発揮してくれる資格です。
特に不動産業界への就転職の際のパワーは凄まじいものと言えます。
中小の不動産屋では宅建士確保の必要性から(宅建業者は従業員数5名に1名以上の割合となるよう事務所に宅建士を設置することが義務付けられている)、実務経験のない60代の方を宅建を持っているという理由だけで採用することもあるぐらいですから。
また、不動産業界以外の業界への就転職に際しても、少なからずアドバンテージにはなります。
宅建資格の難しさは多くの人事担当者に認知されており、持っていること自体が学習能力の高さの証明になりますし、さらに、どのような事業を行っている企業でも法律の知識は必ず役に立つものだからです。
宅建士でないとできない業務がある
宅建業者(=不動産屋)が法律上、必ず実施すべきことを義務づけられている業務の中には宅建士でないとできない業務があります。
具体的には以下の3つです。
- 重要事項説明
- 重要事項説明書(35条書面)への記名押印
- 契約書(37条書面)への記名押印
これらの業務については、たとえ業界一筋30年の不動産屋の社長であっても、宅建を持っていない限り行うことができません。
やったら、免許権者から厳しい監督処分を受けることになります。
つまりは宅建士がいないかぎり、取引を完結できないということであり、当然、仲介手数料を受け取ることもできなわけです。
そんな重要な職責を担う宅建士になるために必要な資格、宅建がオワコンになるなんてこと、あると思いますか?
普通に考えて、ありえないですよね。
独立開業もできる
宅建の資格があれば、国土交通大臣や知事から免許を受け、宅建業者として独立開業することも可能です。
宅建業者として独立開業するなどというと巨額な資金が必要になりそうな気がしますが、実際には、そうではありません。
飲食店等の他のリアルビジネスから比べれば、独立開業に必要な資金は3分の1~4分の1程度なのです。(ビジネスモデルによって、多少の前後はあります)
その上、開業後も不動産屋の最も一般的なビジネスモデルある「仲介」に専念しているかぎりは仕入れがないため、粗利率が高く、仕入損も発生しえない。
客単価も100万円を超えることもざらにあるなど、極めて高い。
こんなおいしいビジネスで独立開業することが可能になる資格、宅建がオワコンであるはずないですよね。
これだけの理由が揃っていれば、オワコンじゃないと信じてよさそうだね。ちょっと、安心したよ。
宅建がオワコンと言われる理由
では、なぜ、上で見てきたように、今なお、かなり魅力的な資格であるはずの宅建がオワコンなどと言われることがあるのでしょうか?
その理由としては以下のようなことを挙げることができます。
- 希少性の低下
- 過剰な期待
- AIの台頭
- 使う機会がない
- やっかみ
以下、それぞれの内容について簡単に説明させて頂きます。
希少性の低下
宅建試験は大変なマンモス試験。
受験者数は毎年、20万人を大きく超え、令和5年度試験では合格者数もいよいよ4万人を突破しました。
つまりは毎年、4万人前後づつ、宅建資格の保有者が増加し続けているといことです。
そういう状況を見て、宅建資格は希少性が低下し価値がなくなってきていると考えている人が増えているのかもしれません。
ただし、合格者の中には、自己啓発の一環として受験したとか、さらなる難関資格を目指すための腕試し的に受験したという人も非常に多く、実務で使うつもりで宅建を取得した人の割合は意外と少なかったりします。
そのためか、中小の不動産屋が宅建士確保に苦労しているというのは未だによく聞く話であり、実際的な需要は未だに高いというの現状です。
その意味において宅建資格の希少性が低下しているとは必ずしも言えないものと考えます。
過剰な期待
宅建資格の取得に際しては、みなさん大変な苦労をされます。
私が知っている人の中には12年も試験を受け続けているという方も。
そういった苦労の中で、いつしか「宅建さえ、とれれば、どうにでもなる!」などという宅建資格に対する過剰な期待が生まれ、その期待と現実とのギャップを知ったときに思わず「宅建はオワコン」などと言ってしまうことになるのでしょう。
不動産屋の人事担当者だって宅建資格の有無だけで採用・不採用の判断をしているわけではありません。
宅建を持っていたとしても、コミュニケーション能力が極端に低かったり、礼儀が全然、なっていなかったりすれば、当然、不採用という判断をすることになります。
宅建を持っているのに不動産屋に就職・転職できないという方は「宅建はオワコン」などという前に、自分に宅建資格を持っているだけではカバーしきれないほどの問題点があるのではないかと疑ってみるべきです。
AIの台頭
AIの能力が益々、レベルアップし、やがては宅建士の資格をとってしまう。
だから「宅建はオワコン」という理屈です。
これは今回、取り上げた理由の中では、個人的にまだ、最も納得のいくものです。
私自身も仕事上、様々なAIツールを使いますが、たしかにその能力が向上する速度には目を見張るものがありますので。
いずれはAI重説が法律上、認められる日がやってくるかもしれません。
でも、そんなことを言い始めたら、他の資格だって同じことですよね。
たとえば医療現場における医師の診断だって、膨大な選択肢の中から可能性の高い順に病名をあげるようなこともAIの方がはるかに短時間で、しかも高精度でできるはずです。
つまりはAIに仕事をとられてしまうようなことは、どんな業種・資格であっても、ありうることなんですよ。
だから、このことを理由に、ことさらに宅建だけを取り上げて、オワコンなどとレッテル貼りするのは、ちょっと、違うんじゃないかなと思っています。
あっ、ちなみに私はAIが宅建士の資格を完全にとってしまうとは考えていませんよ。
お客さんが重説の内容を理解しているかどうかを確認しながら、よりわかりやすく説明するようなことは、まだまだ人でないとできないと思っていますので。
ただ、AIが宅建士の仕事のあり方を変えてしまうのは間違いないでしょう。
ひょっとすると法律上、宅建士の設置義務の考え方なんかも変わってくるかもしれません。
まあ、どれくらい先の話かはわかりませんけどね。
使う機会がない
せっかく宅建をとったけど、使う機会がない。
だから、オワコンだという理屈です。
この意見には正直、かなりビックリしました。
いやいや、使う機会がないような資格を選んで受験したのはあなたでしょ(笑)
それを使う機会がないからオワコンだと決めつけるなんて酷すぎますよね。
宅建は有用な資格です。
でも、全く使うつもりがない人がとったところで、その有用性を感じることは、やはり難しいです。
ちゃんと使う可能性を考えた上で取得するべきか、どうかを判断するようにして下さい。
やっかみ
宅建試験合格に向けて前向きに頑張ることができる人へのやっかみから「宅建はオワコン」などという人がいるということです。
頑張ることから逃げているような人の中には、他人の頑張りをコケにするようなことを言いたがる人が一定数いるものなんですね。
もちろん、そういう人の言うことを真に受ける必要はありません。
せっかく宅建資格に興味を持ったなら、どうか気にしないで試験合格に向けて頑張って下さい。
既にお伝えしているとおり、宅建が今後も有用な資格であり続けることは間違いありませんので。
やっかみで宅建はオワコンなんて言っている人もいるんだね。タチが悪い。
宅建を取得するメリット
最後に宅建資格を取得することによって、あなたが得られるメリットをお伝えしておきたいと思います。
多少、ここまでの内容と重複する部分があるかもしれませんが「宅建はオワコン」などという見当違いの噂を聞いて下がってしまっているテンションをリセットし、試験合格に向けて気持ちも新たに勉強を頑張るためにも是非ともご一読下さい。
私がこれまで多くの宅建試験合格者を見てきた中で感じる宅建資格取得のメリットとしては次のようなものがあります。
- 就職・転職に有利
- 社内での昇進に役立つ
- 独立が可能になる
- 法律の基礎知識が身に着く
- 基礎学力の高さの証明になる
- 自信が持てるようになる
以下、それぞれについて簡単に解説させて頂きます。
就職・転職に有利
この点についてはすでに「宅建がオワコンではないと言い切れる3つの理由」の中でもお伝えしたとおりです。
宅建資格を持っていることは、不動産業界への就転職では圧倒的に、それ以外への業界への就転職でもそれなりに有利になりますので、是非ともしっかりと活用して下さい。
ただし宅建を持っているだけで即採用となるわけではありませんので、それ以外の点についてもレベルアップしていけるよう努力して下さい。
社内での昇進に役立つ
宅建資格があると就職・転職後の社内での昇進にも役立ちます。
私が過去に受験指導した方から聞いた話ですが、その方がお勤めの信用金庫では宅建資格を取得していると課長職に昇進するための筆記試験が免除されるらしいです。
つまりは不動産業界ならずとも、宅建資格を持っていると、それだけで一定以上の法律と不動産に関する知識があるものとして、きちんと評価してもらえるということですね。
もちろん、全ての業種において、ここまで高い評価がされるわけではないでしょうが、どんな業種であっても、上に立つものに法律の素養があるに越したことはないはずです。
業種問わず、出世の役に立つことは間違いないでしょう。
ちなみに私がよく知る、宅建業者ではどんなに成績の優秀な営業マンでも宅建を持っていない限り、主任にすら昇進させないそうです。
この場合は昇進に役立つというより、昇進のための必須条件になっているということですね。
厳しい!
独立が可能になる
この点についても「宅建がオワコンではないと言い切れる3つの理由」の中でお伝えしたとおりです。
ちなみにうちのクライアントの中には業界未経験で独立した後、2年目で年商4000万円を突破したツワモノも。
物件価格の相場が売り上げに大きく影響してしまうビジネスなので、どこで開業しても同じような結果が出るわけではありませんが、結構、夢のあるビジネスであることは間違いありません。
「サラリーマンのまま終わりたくない」と考えている方は是非、独立のための手段の一つとして検討してみて下さい。
法律の基礎知識が身に着く
宅建資格を取得するための勉強の過程で以下のような法律の基礎知識が身に着くことになります。
- 民法
- 不動産登記法
- 借地借家法
- 区分所有法
- 宅地建物取引業法
- 都市計画法
- 建築基準法
- 土地区画整理法
- 宅地造成等規制法
など
民法はすべの私法(個人間のことを定める法律)の基本となる法律であり、その知識は契約ごとはもちろんのこと、相続の場面などでも必ず役に立ちます。
また民法以外の法律についても人生のうちで何度かは経験することになる賃貸や売買などの不動産取引の場面では必ず役に立つものです。
つまり宅建資格取得のために身に着けた知識は試験に合格したら、それで用なしになるような類のものではありません。
人生を通じて、あなたが大きなライフイベントで誤った判断をすることがないよう大いにサポートしてくれるはずです。
基礎学力の高さの証明になる
宅建試験はそれなりに難しい試験であることが広く認知されている試験です。
そのため宅建を持っていると言えば、まあまあ、高い基礎学力を持つ人であると認識してもらえることになると思います。
今は大学全入時代(大学入学希望者全員がどこかしらの大学に入学できる時代という意味)とも言われており、有名大学でもないかぎり、大卒と言えども、高い基礎学力を持つ人と判断してもらうことができません。
それこそ、宅建試験の方が、わかりやすく基礎学力の高さを証明できるのではないでしょうか。
ご自身の基礎学力の高さを示すために宅建資格を取得するというのもアリの考え方だと思います。
自信が持てるようになる
宅建というそれなりに難しい試験に合格したことによって自分に自信が持てるようになるということです。
宅建試験は6~7人に1人しか合格できないという、結構な難易度の試験です。
中学校のクラスでたとえれば40人中、6番目か7番目くらいには入っていないと合格できないということになります。
それぐらいの難易度の試験に合格できたなら、自信が持てるようになるのも、ある意味、当然のことですよね。
私の過去の教え子の中に、自分が高校を中退していることを気に病んで、やたらと「自分なんて」というような発言の多い方がいらっしゃったのですが、この方も宅建資格を取得することによって、そういった自分を卑下するような言い方をすることが、めっきり減りました。
きっと、宅建試験に合格したことによって「自分もやったらできるんだ」という自信が持てたのだと思います。
もし、何らかの事情で自分に自信が持てないという方がいらっしゃったら、是非、宅建試験に挑戦し、宅建資格と共により良い人生を過ごすために必要な自信を合わせて手に入れて下さい。
結構、取得のメリットの大きい資格であることがおわかり頂けたんじゃないでしょうか。あなたも是非、宅建資格を取得して、そのメリットを大いに享受して下さいね。
まとめ
- 宅建はオワコンなどではない。今なお、非常に有用な仕事である。
- 宅建はオワコンではないと言い切れる理由は以下の3つ
・就職・転職の場面で力を発揮してくれる
・宅建士でないとできない業務がある
・独立・開業もできる - 宅建がオワコンだと言われる理由は以下の5つ
・希少性の低下
・過剰な期待
・AIの台頭
・使う機会がない
・やっかみ
ただし、いずれも宅建をオワコンとする論拠にはなりえないものと考える - 宅建を取得する主なメリットは以下の6つ。
・就職・転職に有利
・社内での昇進に役立つ
・独立が可能になる
・法律の基礎知識が身に着く
・基礎学力の高さの証明になる
・自信が持てるようになる
ちなみに私自身も宅建資格には大いに救われてきました。
約25年前、結婚したての時期に勤務していた会社が倒産した際にも、厳しい就転職環境にもかかわらず、ほぼ、一瞬で転職できたのは宅建資格のおかげでしたからね。
当時の私には不動産での勤務経験はもちろんのこと、営業経験さえありませんでした。
本当に単純に宅建資格を持っているという理由だけで採用されたようなものなのです。
そして今なお、宅建資格は大いに力を貸してくれています。
私だけじゃありません。
私のクライアントも、私の講師時代の教え子たちも現在進行形で、宅建資格を持っていることによる恩恵を大いに受け続けているのです。
だから自信を持って言えるんですね。
宅建はオワコンなんかじゃないと。
ですから、これから勉強を始められる方、既に勉強を始められている方、いずれも安心して宅建資格取得に向けて頑張って下さい。
近い将来、あなた自身が「宅建はオワコンなんかじゃない!」と実感できる日がやってくることになるはずなので。
以上、今回は「宅建はオワコンなのか?」というテーマでお送り致しました。
たしかにバブル期のことなどを考えれば、宅建資格が簡単に大金を生むようなものではなくなっているかもしれません。ただ、それでもなお、有用な資格であることに変わりはなく、やはり、宅建はオワコンなどではないのです。宅建資格の取得を考えられている方は安心して勉強に取り組んで下さいね。