今回は「宅建士は本当に食いっぱぐれのない資格か?」というテーマでお伝えしたいと思います。
これ、今まさに宅建士資格の取得を検討されている方にとっては非常に気になる話ですよね。
私は過去に長い間、宅建講師をやっていた関係で、多くの宅建士資格取得者とご縁があり、彼らがその後、どうなっているかも知っています。
つまりは多くの客観的事実に照らし「宅建士は食いっぱぐれのない資格か?」という疑問に対する回答ができるということです。
興味のある方は是非ともお読みになって下さい。
食いっぱぐれのない資格だったらうれしいな。
宅建士は食いっぱぐれのない資格なのか?
それでは早速、結論から。
はい、誰がなんと言おうと
宅建士は食いっぱっぐれのない資格です。
誰でも正しい努力をすれば取得できるレベルのものとしては、おそらく最強レベルに有用性の高い資格と言ってよいでしょう。
正直、私は人生の保険にもなりうる資格だと思っています。
その理由としては以下のようなことが挙げられます。
- 宅建業界での底堅い需要
- 宅建士独占業務の存在
- 独立することも可能
- 他業界での評価の高さ
- 副業でも活用できる
以下、それぞれの理由について簡単に解説していきます。
宅建業界での底堅い需要
宅建業者は事務所ごとに従業員数5名に1名以上の割合となるように専任の宅建士を設置しなければならないとされています。
この設置義務を満たすことができない状態になった時には、2週間以内に新たに専任の宅建士を設置するなどの是正措置をとらなければなりません。
そして是正できない場合には、その事務所での宅建業者としての業務ができないことになってしまうのです。
つまりは宅建業者の業務は、従業員数5名に1名以上の専任の宅建士がいて、はじめて行いうるものということですね。
そのため、宅建業界では常に宅建士に対する底堅い需要があります。
タイミングによっては宅建士を持っているという理由だけで採用されることも。
もちろん、一旦、採用されればクビも切られにくくなります。
以上のような事情から宅建士は極めて食いっぱぐれしにくいと言われているのです。
宅建士がいてこその宅建業者という感じなんだね。
宅建士独占業務の存在
以下の業務は宅建士の独占業務となっています。
- 重要事項説明
- 重要事項説明書(35条書面)への記名押印
- 契約書(37条書面)への記名押印
これらの業務はいずれも不動産取引の根幹をなす、重要度の高いものばかり。
重説や契約をしないで取引を完了させることはできませんからね。
言ってみれば、宅建業者は宅建士がいてこそ、お客さんから手数料を受け取ったりすることができるのです。
そう考えると、ものすごい依存度の高さですよね。
このことも宅建士が食いっぱぐれしにくい理由の一つとなっています。
他業界での評価の高さ
宅建士は宅建業界だけでなく、金融業界や建設業界でも、非常に需要のある資格です。
宅建業界であれば担保となる不動産の評価等の場面で、建設業界であれば建設用地の仕入れ等の場面で、宅建士としての知識が大いに役立つことになるからです。
さらに、それ以外の業界でも不動産や法律の基礎知識を身につけている人材として一定の評価を受けることになるので、就転職や社内での昇進に際して有利に働くことは間違いありません。
このように宅建士の資格は宅建業界以外の業界でも想像以上に評価が高いのです。
このこともまた、宅建士の資格があれば、食いっぱぐれしないと言われる理由の一つと言えるでしょう。
金融業界では宅建士資格を持っていることで昇進試験が免除されたりすることもあるんですよ。
独立することも可能
宅建士の資格があれば、仮に年齢等の問題で宅建業者に就転職ができなかったとしても、自ら宅建業者として独立することもできます。
宅建業者として独立するなどと言うと、ものすごくハードルが高そうに感じるかもしれませんが、実際は、そんなことはありません。
事実として当方のクライアントでも宅建業界未経験で独立し、大きな成功を収めている方が何人もいらっしゃいますので。
宅建業者は他のビジネスに比べて圧倒的に顧客単価が高いビジネス。
そのため、ビジネスとして成立するために必要なお客さんの数が少なく食べていけるようになりやすいのです。
たとえば3000万円の中古マンションの売買契約を自社だけで仲介できれば、売主・買主双方から、それぞれ96万円づつの手数料を受け取ることができてしまいます。
つまり一発で96万円×2=192万円もの売上が得られるということですね。
結構な金額でしょ。
しかも仲介の場合、仕入れがあるわけでないので、ほぼ利益ですから。
これで食べていけるようになりやすいという話もご納得頂けたのではないでしょうか。
宅建士資格があれば宅建業者として、すぐにでも独立できてしまう。
これもまた、宅建士資格保有者が食いっぱぐれしにくいことの論拠の一つとなります。
一発で192万円はすごいなあ。これだけ顧客単価が高いとたしかに割と簡単に食べていけるようになれそう。
副業でも活用できる
近年は宅建士資格を副業で活用しているという話もよく聞くようになりました。
たとえば平日はこれまでどおり会社勤めをしながら、土日だけ宅建士資格を持つ、営業マンとして宅建業者で働くということですね。
なお、こういった副業では労働時間に対して時給という形で報酬が支払われるのではなく、成約という成果に対して歩合給という形で報酬が支払われることも多いようです。
成果報酬の場合、当然、朝から晩まで働いたのに1円の収入も得られるないということも普通にありえますので、報酬支払の条件は事前にしっかりと確認するようにして下さい。
ちなみに私が知っている宅建士の中に副業で一月で約240万円もの収入を得たという人がいます。
副業で240万円ってすごいですよね。
言うまでもなく宅建士資格があるからこそ、可能になった金額です。
これもまた、宅建士が食いっぱぐれのない資格であることの根拠の一つになると考えます。
食いっぱぐれないために知っておきたいこと
宅建士資格があれば、食いっぱぐれしにくいというのは紛れもない事実なのですが、それでも時々、食いっぱぐれることになってしまう人がいらっしゃいます。
ここでは、そういう不幸な事例を踏まえ、宅建士資格を活かして、より確実に食いっぱぐれない状況を作るために知っておくべきポイントを3つほど、紹介しておきますね。
具体的には以下の3つになります。
- 宅建士資格に依存しすぎない
- 営業力の研鑽に努める
- 宅建士資格の価値が高い業界・職場を選ぶ
以下、それぞれについて簡単に説明させてもらいますね。
宅建士資格に依存しすぎない
昔、まだ私が宅建講座の講師をやっていた時の話です。
その前年に無事、宅建試験に合格した受験生から急に電話がかかってきて、こんな意味合いのことを言われました。
「先生が授業中に宅建資格があったら、転職しやすいと言っていたのを信じていたのに全然、転職先が決まらないんです。
どうして、くれるんですか?」
さすがにこんな人は稀だと思いますが、自分でも気づかないうちに同じような考え方に陥っている方は結構、いらっしゃると思うので申し上げておきます。
これまでお話してきたとおり、宅建士が非常に価値の高い資格であることは間違いないのですが、それでも、やはり無敵カードというわけではありません。
たとえば宅建業者での採用面接に際して、宅建資格を持っていることによって100点満点評価で30点の得点をもらえたとしても、残り70点の部分で全く加点ポイントがなければ採用担当者は当然、不採用という判断をすることになるわけです。
食いっぱぐれたくないのであれば宅建資格に依存しすぎてはいけません。
宅建資格を持っているという大きなアドバンテージを自らの自信としつつも、上の例で言えば残り70点の部分でも、少しでも多く得点できるよう自己研鑽を続けるべきだと考えます。
営業力の研鑽に努める
これは上記「宅建士資格に依存しすぎない」に含めてもよかったのですが、非常に重要な話なので、あえて分けてお伝えすることにしました。
宅建士資格があれば、他によほど大きな問題がないかぎり、宅建業者に就転職することはできるはずです。
また、一旦、就職して専任の宅建士になってしまえば、専任の宅建士の人数によほど余裕がないかぎり、解雇もされにくいと思います。
ただし、解雇はされなかったとしても宅建士資格があるだけで収入が高くなることが保証されるわけではありません。
宅建業界では給与における固定給の割合が小さく、歩合給等の成果報酬部分が大きくなるのが一般的。
そのため、たとえ宅建士資格があって多少の資格手当がついたとしても、成約数を伸ばすことができなければ、生活していくのに十分な収入を得られないこともよくあるのです。
だから宅建士資格があったとしても成約数を伸ばすべく営業力の研鑽に努める必要があるということですね。
私が知る限りでも勉強が得意で宅建士資格をサクッと取得するような方は結構、営業が得意でないということが多いです。
宅建資格のおかげでせっかく就職できたのに十分な収入が得られないようでは結局は食いっぱぐれてしまうことになります。
そんなことにならないよう就職後は営業力を高めるための努力を続けて行って下さい。
やっぱり営業力は必要になるのか。辛いなあ。
宅建士資格の価値が大きい業界・職場を選ぶ
宅建士は一般的に言っても価値の高い資格ではありますが、それでも業界によって価値の高さの重みづけが大きく異なりますので、なるべく価値の高くなる業界を選んで就転職するのがおすすめです。
具体的には
- 宅建業界
- 金融業界
- 建設業界
などを選んで就転職すれば、宅建士資格の価値がもたらす恩恵を十分に享受することができるでしょう。
これら以外の業界であっても、不動産や法律の知識が活かせる部署、たとえば
- 法務部
- 総務部
などに配属される人材の募集であれば、宅建士の資格を保有することが一定の評価を受けることになるのは間違いありません。
なお、宅建資格の価値を最も発揮しやすい宅建業界であっても、宅建業者によってその価値の重みが違ってくることは知っておいて下さい。
たとえば、地域密着型で営業している規模の小さな宅建業者であれば、宅建士資格を保有していることの価値は非常に大きなものとなりますが、全国に支店を多く持つような規模の大きい宅建業者の場合、「宅建士資格は持っているのが当たり前」といった感じの評価になることがあります。
要するに規模の大きい宅建業者の場合、宅建資格を持っているだけで採用されたり、社内で厚遇されたりといったことにはまずならないということです。
宅建士資格を保有していることのアドバンテージをフルに活かすことを考えるのであれば、規模の小さな宅建業者で働くことを選択する方が賢い選択と言えると思います。
食いっぱぐれはないけれど・・・
宅建士が食いっぱぐれのない資格であるというのは紛れもない事実です。
だから宅建士資格に興味があるのであれば、今すぐ使う予定がなくても、取得しておいて損はないでしょう。
人生のどこかの時点で発生するかもしれない重大な危機において、きっと、あなたを救ってくれる保険のような存在になってくれるはずです。
ただし、それだけ魅力的な資格なので、取得するためにはそれなりの努力が必要となります。
はい、宅建士試験は実は結構、難しい試験なのです。
例年の合格率は15%~18%程度。
大体、受験生6~7人に1人しか合格できない計算になります。
ね、世間一般のイメージに比べて、はるかに難しいでしょ。
ですので、宅建士資格の取得を目指すのであれば、それなりの覚悟を持って臨む必要があります。
「とりあえず、ちょっと勉強してみるか」ぐらいの気持ちでスタートを切ると、極めて高い確率でドロップアウトすることになってしまいます。
覚悟の量を見誤られませんように。
以下、正しい覚悟の量で宅建士試験の勉強に取り組んでもらえるよう、宅建士試験合格に向けて知っておきたい基本情報をさらっとお伝えしておきます。
そこそこのレベルの大学の法学部を卒業されている方でもなめてかかると普通に落ちてますよ。決してなめてかからないことです。
試験の出題対象となる法律科目とその配点
宅建士試験の出題対象となる法律科目とその配点は以下の表のとおりです。
分野 | 法律 | 配点数 |
権利関係(14点) | 民法 | 10点 |
不動産登記法 | 2点 | |
区分所有法 | 1点 | |
借地借家法 | 1点 | |
宅建業法(20点) | 宅建業法 | 19点 |
住宅瑕疵担保履行法 | 1点 | |
法令上の制限(8点) | 都市計画法 | 3点 |
建築基準法 | 2点 | |
農地法 宅地造成等規制法 土地区画整理法 その他法令上の制限 | 3点 | |
税法その他(5点) | 税法 | 2点 |
統計 | 1点 | |
土地 | 1点 | |
建物 | 1点 |
一目見て民法と宅建業の配点が突出して大きいことがわかりますよね。
つまり、宅建士試験は民法と宅建業法を制する者が制する試験なのです。
ただし、民法は、人によって得意・不得意が大きく分かれる法律科目なので、得点が伸び悩んだときは、あまり深追いせず、他の法律科目でカバーする方法を考える方が得策です。
僕も民法は苦手だったなあ。宅建業法でほぼ満点をとって逃げ切った感じ。
合格ライン
近年の合格ラインは50点満点中、35点~38点あたりです。
平成頃までは35点以上、とっていれば、まず、落ちることのない試験だったのですが、ここ10年程は合格ラインが36点以上となる年が増えています。
したがって、そのことを前提に得点計画を立て、試験対策を行っていく必要があります。
出題形式
四肢択一式です。
四肢択一式ということは四肢中、三肢についての正誤判断ができれば、その問題に確実に正解できるということ。
このことから宅建士試験は、細かい知識にまで手を広げなくても重要度の高い知識を確実に身に着けていれば合格できる試験であることがわかります。
分厚いテキストより、むしろ、かなり薄めのテキストを用いて重要度の高い知識を確実に身に着けるような学習を心がけましょう。
教材
宅建士試験対策に必要な教材は以下のとおりです。
- 薄めのテキスト
- 分野別過去問
近年、宅建試験が難化傾向にあることを受けて、予想問題集の類が多く出回るようになりましたが、私、個人としては合格するために必須の教材ではないと考えます。
特に学習時間の限られる社会人受験生の場合、予想問題集にまで手を広げることによって、かえって、あやふやな知識が増え、マイナスの影響が出てしまう可能性も否定できませんので、利用にあたっては、ご自身の状況を踏まえ、適切に判断なさって下さい。
手を広げた学習は忙しい社会人受験生にとって命取りになることが多いです。十分、注意しましょう。
まとめ
- 宅建士は食いっぱっぐれのない資格である。
その主な理由は以下のとおり。
・宅建業界での底堅い需要
・宅建士独占業務の存在
・独立することも可能
・他業界での評価の高さ
・副業でも活用できる - 宅建士資格を活かして、より確実に食いっぱぐれない状況を作るために知っておくべきポイントは以下の3つ。
・宅建士資格に依存しすぎない
・営業力の研鑽に努める
・宅建士資格の価値が高い業界・職場を選ぶ - 宅建士は食いっぱぐれのない資格ではあるが取得のための難易度は世間一般で考えられているより、はるかに高い。
挫折することなく資格取得するためには正しい覚悟をもって臨む必要がある。
なお、一部で宅建士はオワコンであるなどということが言われているようですが、もちろん、そんなことはなく、宅建士の資格があれば、食いっぱぐれることがないという状況は今後も続いていくことでしょう。
是非、この機会に宅建士資格を取得し食いっぱぐれる心配のない、安心な未来を手に入れて下さい。
以上、今回は「宅建士は本当に食いっぱぐれのない資格か?」というテーマでお届け致しました。
興味があれば以下の記事もお読みになって下さい。きっと、より前向きな気持ちで宅建士資格取得のための学習に取り組むことができるはずです。