先日、拙著「過去問で効率的に突破する宅建試験勉強法(同文館出版)の読者の方からお手紙を頂きました。
ご相談の趣旨は「既に宅建試験に3回も落ちていて恥ずかしい。これ以上勉強しても、たぶん、合格できないと思っている。もう、あきらめた方いいのか?」といったもの。
あきらめる、あきらめないはご本人の判断次第だとは思います。働きながらの宅建試験挑戦はモチベーションが低い状態では正直、厳しいと思うので。
私が気になったのはむしろ「宅建試験に落ちて恥ずかしい」という記述です。
こういう声って過去の受講生からもちょくちょく聞いていたことがあるのですが、宅建試験に落ちることって、果たしてそんなに恥ずかしがったりしないといけないようなことなのでしょうか?
どうも宅建試験のことをよく知る人間としてはモヤっとします。
そこで、この点について長く宅建試験の受験指導に携わってきた者の1人としてあらためて考えを述べてみることにしました。
あくまで私見ではありますが興味のある方は是非ともご一読頂ければと思います。
宅建試験に落ちるのは恥ずかしい?恥ずかしくない?
まずは結論から申し上げます。
宅建試験に落ちるのは恥ずかしいことではありません。
それも1ミリもです。
宅建試験は、そもそも合格率15%から18%という難関試験ですよ。
つまりは100人受験して、15人から18人しか合格できない試験、逆に言うと82人から85人は不合格になる試験なわけです。
そんな試験に落ちたとしても恥ずかしいなんて感じる必要ないですよね。
だから宅建試験に落ちたとしても堂々としてましょう。
バカにするやつはほっておけばいいのです。
潔く「頑張ったけどダメだったわ」と言っておけばいいのです。
とにかく宅建試験に落ちたことについて恥ずかしがったりするのはやめましょう。
何度も落ちるのは恥ずかしい?
「まあ、宅建試験に落ちるのが恥ずかしいことではないのは、なんとなくわかった。でも、さすがに何度も落ちるのは恥ずかしいでしょ?」
こんなことを考えている方が結構、多くいらっしゃると思うので、この点についてもお答えしておきます。
別に何度、落ちたとしても恥ずかしがる必要はないです。
宅建試験に限らす、試験というのは水物。
運が大きくものを言います。
まして宅建試験は年にたった1回しか実施されないものです。
しっかり勉強してきただけに、かえって試験当日、緊張してしまって力が出し切れないようなこともあるでしょう。
このような事情を考えれば2回や3回、落ちるなんて全く普通のことです。
4回以上、不合格ともなると勉強方法については疑ってみる必要があるかもしれませんが、それでも恥ずかしがる必要はありません。
そもそも宅建試験は法律という特殊な学問領域の知識と理解が試される優秀な人達向けの試験なのですから。
そんな試験に果敢に挑戦するご自身の気概、姿勢を誇って下さい。
自らは戦いもしない外野の言うことはほっておきましょう。
なぜ、恥ずかしいなどという話になるのか?
上記のように宅建試験は合格率も非常に低く、しかも法律という特殊な学問についての知識や理解の程度を試される試験です。
このあたりのこと、ある程度はみんなが知っている事実のはず。
にもかかわらず、落ちたら恥ずかしいなどということがよく言われるのはなぜ、なのでしょうか?
私が考える主な理由は以下の3つです。
- 法律系国家資格としては簡単である
- 大昔、実際に簡単であった
- マウントをとりたがる人がいる
以下、それぞれについて詳しく解説していきます。
法律系国家資格としては簡単である
宅建試験は法律系の国家資格ですが、法律系の国家資格は司法試験や司法書士試験等、極端なまでに難易度が高いものが多く、それらとの比較の中では相対的に簡単と評価されます。
そのため何度も落ちるのは恥ずかしいこととされてしまうわけです。
しかしながら事実としては、他の法律系の国家資格が難しすぎるだけのこと。
宅建試験だって決して簡単なわけではありません。
いやむしろ資格試験全体で考えれば難しい部類に入るぐらいだと思いますよ。
だから、落ちたとしても、やはり恥ずかしがる必要などないのです。
大昔、実際に簡単であった
宅建試験は大昔、実際に非常に簡単な試験でした。
特に宅建試験が開始されてからの最初の3年間は1958年、93%、1959年、98.2%、1960年、83.1%と自動車試験並みの合格率だったのです。
この時期に宅建試験は「ものすごく簡単な試験」という強いイメージが生まれ、そのイメージを引きずるようにして今でも「宅建試験に落ちるのは恥ずかしい」などと言われ続けているわけですね。
ちなみに宅建試験の合格率は1980年代以降は、1982年の一回を除き、ずっと20%を切っています。
それにもかかわらず簡単な試験だと思われ続けているなんて酷い話だと思いませんか。
ほんと、一度ついてしまったイメージって、なかなか覆すことができないものなんですね。
マウントをとりたがる人がいる
自分が運よく宅建試験に一発合格したことが自慢で、そのことをもってマウントをとりたがる人が少なからずいらっしゃいます。
で、そういう人が「宅建試験なんて簡単。落ちたら恥ずかしい」などと、わざわざ色んなところで言ってまわったりするんですね。
宅建試験に一発合格することは本当にすごいことだと思います。
でもね、だからといって、8割以上の人が不合格になる試験について、わざわざ「落ちたら恥ずかしい」なんて言う必要ないですよね。
大多数の不合格になる人の気持ちを考えられないような発言をしてしまうことの方が、よっぽど恥ずかしいと思うのは私だけでしょうか。
私が知る限り45点を超えるような高得点で合格しているような実力者は例外なく「宅建試験は難しい」とか「運が良かった」などとおっしゃっています。
やはり冷静に物事を考えられる人に言わせれば宅建試験はれっきとした難関試験なのです。
さっさと合格すべき人はいる
ここまでお伝えしてきたとおり、私は宅建試験に落ちるのが恥ずかしいことだとは1ミリも思っていません。
しかし、個人的にさっさと合格すべきと感じる人はいます。
不動産屋の中堅以上の営業マンの方ですね。
接客の際にさも不動産取引に関することは何度も知っているかのような顔をしていたのに、いざ重要事項説明の段になったら「すいません、私は宅建を持っていないので他のものに説明してもらいますね。」などと言われたら、お客さんは「今までの話、本当にあってるの?信じていいの?」と不安になりますよね。
別に宅建試験に落ちること自体を恥じる必要はありません。
でもね、お客さんを「この人に任せて大丈夫?」と不安にさせてはダメですよね。
そうならないためにも、さっさと合格して宅建士と名乗れるようにはなるべきです。
あっ、若手、営業マンなら、まだいいんですよ。
お客さんとしても「まだ、宅建、とれていないんだ。早くとれるように勉強、頑張って」という感じでしょう。
でも、中堅以上の営業マンともなれば、お客さんの見方は変わります。
ぶっちゃけ、営業マンとしての資質・能力が疑われることだってあるでしょう。
そうならないためにも宅建試験にさっさと合格できるよう努力して下さい。
まとめ
- 宅建試験に落ちるのは全く恥ずかしいことではない。
難易度等を考えれば複数回、落ちることがあったとしても特に恥じる必要はない - 宅建試験に落ちたら恥ずかしいなどということがよく言われる理由は以下の3つ
①法律系国家資格としては簡単である
②大昔、実際に簡単であった
③自分が一発合格したことが自慢でマウントをとりたがる人がいる - 宅建試験に落ちることは恥ずかしいことではないが、不動産屋の中堅以上の営業マンは、お客さんに不安を感じさせないためにも、さっさと合格すべき。
ちなみに今回、この記事を書かせてもらうにあたって、意識調査の意味で、ネット上で色々な書き込みなどをチェックしていたのですが、宅建試験に落ちることどころか、宅建試験を受けること自体が恥ずかしいという意見があって非常に驚かされました。
どうやら宅建試験のようなレベルの低い試験を受けることが恥ずかしいという意味のようなのですが、そう感じるは個人の勝手だとしても、それをわざわざ書き込むことに関しては、宅建受験生を傷つけようとする意図しか感じません。
このような書き込みを真に受けないようにして下さい。
宅建試験は紛れもなく挑戦する価値のある試験ですからね。
合格の栄冠を手にする、その日まで、あきらめることなく走り続けて下さい。
以上、今回は「宅建試験に落ちるのは恥ずかしいことか?」というテーマで私見を述べさせて頂きました。